2013 Fiscal Year Research-status Report
非解離レーザーイオン化法の開発による生理活性物質の選択的高効率検出と機構研究
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24550030
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
藤野 竜也 首都大学東京, 理工学研究科, 准教授 (20360638)
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Keywords | レーザーイオン化法 / 酸化物固体表面 / ナノ微粒子 / 半導体 / 脂肪酸 |
Research Abstract |
マトリクス支援レーザー脱離イオン化法(MALDI法)は、試料分子を壊さずイオン化できるソフトイオン化法の一つとして有用であり、主に飛行時間型質量分析装置と組み合わせることで、分子量による試料の判別が可能であり、様々な分野における解析法として利用されている。しかしながら1)イオン化効率が低い2)低分子量試料への適用が困難3)測定できない分子がある、などといった問題点も同時に持っている。本研究ではこのような問題点を解消するため、典型的な有機マトリクス分子と構造を持つ分子との複合体の作成を行い、生理活性物質の網羅的測定法を提供する。 平成25年度としては、酸化物固体表面上に、ナノメートルサイズの金・銀および半導体微粒子を担持させることで、従来のMALDI法では検出が困難な分子の検出に成功した。特にCdTeナノ粒子を担持させた系では、光励起後に生じるキャリアの再結合によって放出される電子を利用し、脂肪酸を脱プロトン化した形で高効率にイオン化させることに成功した。脂肪酸は従来MALDI法では全く検出ができない分子の一つであり、レーザーイオン化の可能性を大きく広げる結果が得られた。さらに酸化物固体を用いることで、微粒子を空間的に均一に配置することが可能となり、レーザーイオン化法では難しい定量分析を可能にした。特にヒト血清中に存在するステアリン酸の濃度を決定することに成功した。 同様にマイクロメートルサイズのサンマリウム系の磁性粒子を従来の有機マトリクス分子と組み合わせる試みを行った。磁性粒子を用いることによる有機分子の電子状態変化を反映して、ペプチド分子の効率的なイオン化に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
レーザーイオン化法における定量分析の実現は当初計画には無いものであったが、ゼオライトを用いることでナノ微粒子の空間均一性が向上することを研究途中で見出したこといにより、定量分析を実現するに至った。MALDI法を含む従来レーザーイオン化法では定量分析が不可能であるだけでなく、単なる検出も不可能な脂肪酸、特にヒト血清中の脂肪酸の定量分析を可能にした点で、当初計画以上に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
層状化合物をホスト分子として用いることで、層間距離以下の分子のみを選択的にイオン化できることをすでに見出しているため、この研究を進める。さらには、シクロデキストリンを用いることで、質量分析では分離が不可能なキラル分子の分離を可能にさせる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
半導体微粒子と酸化物固体を利用した研究において、当初計画には無い定量分析が実現できたことにより、その研究を優先させた。開発したマトリクスを評価するうえで赤外およびラマン散乱測定を予定していたが、新たな研究進展によりラマン散乱は次年度に持ち越しとなり、その際に購入を予定していた光学素子が繰り越し分として残った。 次年度にラマン散乱測定用の光学素子を購入し、マトリクス評価に用いる。
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Research Products
(12 results)