2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
24550033
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Research Institution | Toho University |
Principal Investigator |
細井 晴子 東邦大学, 理学部, 講師 (00313396)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | マルチプレックス二光子吸収分光法 / HBDI / eGFP / 電子励起S2状態 / 高振動励起S1状態 |
Outline of Annual Research Achievements |
蛍光タンパク質は生きたままの細胞の三次元イメージングを可能にする。しかし、その基礎となる蛍光タンパク質の二光子励起蛍光メカニズムは、観測技術の制約によりほとんど調べられていない。本課題研究者は以前、新規に開発されたマルチプレックス二光子吸収分光法を用いて、最もイメージングに利用される蛍光タンパク質enhanced GFP (eGFP)の二光子吸収スペクトルを世界で初めて精度よく測定した。その結果、群論に基づく予測とは異なり、二光子吸収ピークが一光子吸収ピークと比較して高エネルギー側に現れることを見出した。この結果に基づいて、一光子許容の電子励起S1状態の近傍に、一光子禁制で二光子許容の電子励起S2状態が存在すると報告した。しかしその後他研究グループにより、eGFPの二光子励起過程に関与するのは高振動励起S1状態であり、S2励起状態ではないという報告がなされ、広く議論になっていた。 そこで本課題では、eGFPの二光子励起過程へのS2励起状態の関与を明確に証明することを目的とした。平成25年度までに、eGFP発色団モデル化合物HBDIの二光子吸収スペクトルを様々な溶媒中で測定した。eGFPと同様にHBDIの二光子吸収ピークも、一光子吸収ピークと比較して全ての溶媒において高エネルギー側に現れた。またそのエネルギー差は、溶媒によって大きく変化した。最終年度ではその結果を振電相互作用モデルにより考察し、二光子吸収ピークをS1の高い振動励起状態への遷移と帰属することは、観測された溶媒依存性とは矛盾することを明らかにした。この結果からeGFPの二光子励起過程にはS2励起状態が関与することを報告した。本成果は、慣習的に起こり得ないとされる現象も、分光学の原点に立ち戻ることでタンパク質のような複雑な分子に関しても理解可能となる好例であると考えている。
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