2013 Fiscal Year Research-status Report
X線自由電子レーザー(XFEL)により拓かれる新しい科学に関する理論的研究
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24550034
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
今村 穣 独立行政法人理化学研究所, 計算科学研究機構, 研究員 (60454063)
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Keywords | X線自由電子レーザー / 内殻イオン化 / 内殻励起 / 多光子過程 |
Research Abstract |
X線自由電子レーザー(XFEL)は、これまで実現できなかった、(A)化学反応の追跡、(B)単分子構造解析、(C)新奇物性の発現、を可能にする夢の光である。(B)を実現するためには、パルス幅を制御し、X線損傷が起こる前に回折データを取得する必要がある。そこで、以前XFELの時間幅をフェムト秒オーダーで精密にモニターすることが可能なアニリン分子を用いたパルス幅実験スキームを提案した。今回はさらにそれを発展させる研究を行った。具体的には、XFELのパルス幅の測定に用いる分子としてフェノールなどの新たな芳香族分子の検討を行った。また、それらの分子の多価イオン状態が示す電子物性について議論を行った。アニリン分子の多価イオン化状態において起こる電荷移動型価電子励起エネルギーの可視光領域へのシフトは、フェノール分子などでも確認できた。また、これらの芳香族分子のイオン化状態が、2価から4価になるにつれて、赤方遷移のシフトが大きくなることがわかった。つまり、これらのイオン化状態が、励起エネルギーの吸収ピークのシフトとしてマッピングされことがわかった。これは、今後の分子デバイスとしての応用が期待される電子物性である。 また、これまで得られた成果およびこれからの研究方向性についてXFELの実験研究者と打ち合わせも行った。実験スキームの実現に向けて、レーザーの精密な制御が必要なことがわかり、今度も更なる検討が必要なことがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の主なトピックである、(A)化学反応の追跡、(B)単分子構造解析、(C)新奇物性の発現、の中で(B)、(C)に関する研究を主に遂行してきた。これまで、蛋白質分子のクーロン爆発を防ぐために必要不可欠なパルス幅の測定手法を提案し、(B)単分子構造解析の実現に向けて大きな進展があった。また、パルス幅の測定に用いる分子の(C)新奇物性に関する検討も行った。以上の検討から、(A)の研究を進めるに必要な知見を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
XFELにより拓かれる新しい科学の根幹となる3つのテーマ、(A)化学反応の追跡、(B)単分子構造解析、(C)新奇物性の発現、に関して今後も研究を行う。これまで(B)、(C)に関して主に研究を遂行してきたが、今後は、まだ進められていない(A)に関してもいままでの知見に基づき進めていく予定である。引き続き、理化学研究所の実験研究者に協力を仰ぎながら研究を遂行する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
所属が変わったため、予算の使用計画を変更した。よって、予定どおり研究費を消費することができなかった。 研究遂行に必要な並列計算機を、残りの予算および次年度使用額を用いて購入予定である。また、実験研究者と複数回の打ち合わせおよび学会での情報収集・成果発表の旅費を申請する予定である。
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