2013 Fiscal Year Research-status Report
超微細構造認識能を発現する人工レセプターを利用した分子間相互作用評価法の確立
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24550043
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
岩本 啓 新潟大学, 自然科学系, 准教授 (80304393)
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Keywords | 分子認識 / ポルフィリン人工レセプター / 基質特異性 / 分子間相互作用 |
Research Abstract |
微細構造認識能を示す人工レセプター分子と軸配位性基質との包接錯体の構造解析、およびレセプターと基質間に働く相互作用の評価を行った。また新しい人工レセプター分子の合成を引き続き行った。 人工レセプターと軸配位性基質との包接錯体は、方向性のある強い配位結合により、包接構造の特定が容易に行える。そこでまず人工レセプターと軸配位性基質との包接錯体をNMRでの解析から、その構造を明らかにした。次に温度可変NMR、紫外可視分光法を用いて、錯形成における会合定数、およびエントロピー、エンタルピーの熱力学パラメーターを得た。得られた熱力学パラメーターから、包接構造で働く弱い相互作用(CH-π相互作用、van der Waals相互作用)の評価を行った。その結果、微細構造認識能にCH-π相互作用が重要な役割を果たしていることが明らかとなった。また認識能を示す空孔内に包接されていた複数の水分子が、基質特異性に影響を及ぼしていることを明らかにした。 次に弱い相互作用だけで包接される包接錯体の構造解析を行った。弱い相互作用だけで空孔内に包接さる小分子は、空孔内での位置の特定、構造解析が難しい。そこで我々が開発した化学シフト計算プログラムの支援のもと、包接構造の解析を行った。得られた解析結果を基に、ゲスト分子と人工レセプターの空孔内で働く弱い相互作用を評価した。 同様に新しく合成した人工レセプター分子を用いて、包接錯体の構造解析、そこで働く弱い相互作用の評価を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
微細構造認識能を示す人工レセプター分子と基質との包接錯体の構造解析、およびレセプターと基質間に働く相互作用の評価を行い、微細構造認識能にCH-π相互作用が重要な役割を果たしていることを明らかにしている。このことから当初の目標を達成していると考えている。 しかし新しく人工レセプターの合成を行ったが、合成した人工レセプターは基質特異性を示すことはなく、弱い相互作用を評価するには適さなかった。弱い相互作用の評価には更に多くの人工レセプターと基質の相互作用を調べる必要があり、次年度(最終年度)の検討課題となった。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで得られた知見を元に、引き続き人工レセプター分子の合成、包接錯体の構造解析、相互作用の評価を行う。弱い相互作用を十分評価できるだけの人工レセプターを自前で用意することが難しい場合、他研究者との共同研究を行い、人工レセプターやデータの提供を受け、弱い相互作用の評価を進める。 化学シフト計算プログラムの改良を行う。コマンドラインユーザーインターフェース(CUI)で開発済の化学シフト計算プログラムのグラフィカルユーザーインターフェース(GUI)化を行う。Windows、Mac、Linuxのいずれでも動かすことができるように、プラットフォームに依存しないJAVA言語で開発する。開発したプログラムはホームページを通して無料公開を行い、他の研究者の包接錯体の構造解析に役立ててもらい、弱い相互作用の実験的評価の推進を図る。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
謝金で予定した支出がなかったため、未消化の予算が発生した。しかし研究遂行上必要な試薬・ガラス器具(消耗品)の購入が当初の予想をはるかに超えた。そのため、差し引き11,459円の残金が発生した。 研究遂行に必要な試薬・ガラス器具の費用は、今後増加すると予想される。よって、消耗品の購入に当てる予定である。
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Research Products
(13 results)