2012 Fiscal Year Research-status Report
刺激の強弱と種類に応じた多状態分子スイッチと刺激応答カプセルの創製
Project/Area Number |
24550044
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
徳永 雄次 福井大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (80250801)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 分子認識 / 分子スイッチ / ロタキサン / 分子応答 |
Research Abstract |
本研究ではロタキサンを複数有する高次ロタキサン合成を行い、複数持つことで生じる新規機能化を探索した。特に24年度は「刺激の強弱に応じた段階的な分子スイッチシステム(多進法分子スイッチ)の構築」に関する研究を以下の2項目について行った。 1.共役部をコアに持つ[3]ロタキサン(液性変化に伴う5 状態スイッチ)の合成研究:刺激の強弱によって段階的にスイッチさせるため、共役部にジフェニルアセチレンを選定したが、酸塩基応答の解析は困難であった。その理由は、共役部をコアにジフェニルアセチレン部を用いた場合、段階的なスイッチに際に、多くの異性体を与えたためである。そこで、ジフェニルアセチレンと同一の共役系であるカルバゾールをコアに持つ[3]ロタキサンを合成し、その酸-塩基応答について検討した。その結果、強酸性、弱酸性、中性、弱塩基性、強塩基性の5状態で[3]ロタキサンが、完全ではないものの選択的に分子応答を行うことを見出した。強酸性、中性、及び強塩基性では予想した通り導入した4個のアミンの完全なプロトン化と脱プロトン化が制御され、弱酸性、弱塩基性では、確率的な数値に比較し2-10倍の選択性が見られた。さらに、同ロタキサンのアウトプットの検出法についても紫外可視分光を用いたところ、液性を変えることによる変化が観察され、目的の結果が得られた。 2.共役コアにジフェニルアセチレン部を用いる2 チャンネル、5 状態分子スイッチの合成研究:ジフェニルアセチレン部の酸塩基応答の解析は困難であったが、コバルト錯体形成により解析が改善されることを期待し、ジコバルトオクタカルボニルの添加による分子応答の2 チャンネル化を実施したものの現在まで良好な結果は得られていない。分子内に存在するアミンとの配位が優先されているものと予想される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
24年度の目標は、刺激の強弱に応じた段階的な分子スイッチシステムであり、本目標を達成するために 1.共役部をコアに持つ[3]ロタキサンの5 状態分子スイッチングと、2.[3]ロタキサンの2 チャンネル、5 状態分子スイッチ応答を検討した。まず1に関しては、計画通りジフェニルアセチレン部を共役コアに数種のロタキサン合成を行い、最終的にはジフェニルアセチレンを有するカルバゾールを用いることで多進法分子スイッチ」の構築、並びに5 状態分子スイッチングに伴う紫外可視分光法によるアウトプット検出法も見出したことより、計画通りの目的を達成した。本研究初期においては[3]ロタキサンによる5 状態分子スイッチングの成果が得られなかったため、別法として2種のロタキサン混合によるスイッチシステムの検討も並行して行った。その結果、設計した2種の[2]ロタキサンの一方の合成とそのスイッチングを完了した。同時に液性変化に伴う紫外可視応答部2種についても予備検討を行い、5 状態スイッチングに適応できることを実証した。2については、計画初期の実験は行ったが残念ながら現在までに2チャンネル化には至っていない。これらを総合すると、1に関してはまず計画通り研究の目的を達成し、さらに計画と異なる方法論での研究についてもその可能性を示すことができたことは、意義あることと考える。また、多くの[3]ロタキサン合成を行い多大な労力を費やしたものの、今後新しい研究を行うための基礎を見出すきっかけになったと考える。2については残念であるが今後の検討としたい。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、上述した5状態スイッチに関する結果について論文を作成する。24年度達成しなかった2チャンネル化については、[3]ロタキサンと金属錯体の安定化を配位子変換によって実現を図る。また液性応答についても状態数は減るものの中性から酸性での検討に留め、目的の2チャンネル化の成功に注力する。 並行して、申請した計画である「ベンゼンをコアに持つオリゴロタキサンの合成」については、以下の通りに行う。まずベンゼンの1,3,5位の3か所にロタキサン部を導入した [4]ロタキサンの合成を実施する。次に合成した[4]ロタキサンの液性変化(酸や塩基の当量数)に対応した段階的なプロトン化と脱プロトン化について、またそれらに伴うトランスレーショナル異性体の形成比の変化について、24年度と同様な方法にて、即ち、核磁気共鳴と紫外可視分光によって解析を行うとともにそれらの異性化に基づくアウトプット検出についても検討する。さらには、段階的なプロトン化と脱プロトン化、また異性化によって生じる電気化学的な特性変換についても検討を加える。続いて、ロタキサン部を増やし、6置換ベンゼンをコアとする [7]ロタキサンの合成も行う。本ロタキサンの合成に関しては、24年度に合成したジフェニルアセチレン部を有する[3]ロタキサンからのコンバージェント合成も可能なため、その検討をまず行う。本コンバージェント合成が成功しなかった場合には、段階的な合成も実施する。合成した[7]ロタキサンの物性検討に関しては、液性変化に対する分子応答、光特性、さらに電気化学的な性質についても[4]ロタキサンと同様に検討する。 ただし、今年度は学内改修工事のため、学内にある高感度の核磁気共鳴が夏以降使用できないため、早い段階から目的化合物の合成に集中する計画である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究遂行のために、[3]ロタキサンとコバルト錯体の原料となる試薬、反応に使用する溶媒、解析のための有機溶媒の購入を行う。また、[4]ロタキサン、[7]ロタキサンについても同様であるため、今年度に関しては既存の機器が破損した場合を除き、新しい機器の導入は今のところ予定していない。現在研究室及び学内にある機器で合成と合成した化合物の解析を行えるものと考えている。従って、物品の予算(1,155,000円)に関しては、全て消耗品(原料、反応試薬、溶媒、ガラス器具、プラスチック器具)の購入に充てる予定である。旅費(110,000円)の予定は、10月に開催される「平成25年度有機合成化学北陸セミナー」(石川県、1泊2日)、11月に開催予定の「平成24年度北陸地区講演会と研究発表会」(石川県、日帰り)、さらに、3月に開催予定の「日本化学会第94春季年会(2014)」(関東地区、4泊5日)に参加し、それぞれ研究成果の報告を行うことを予定している。ただし、夏以降に関しては若狭湾エネルギー研究センターなど近隣の研究施設へ高感度の核磁気共鳴を使用することが予想されるため、本件に関する旅費として使用する。この場合の核磁気共鳴機器の使用料も本研究費から支払う予定である。 一方謝金に関しては、今年度の計画で述べたように研究成果の論文を作成するときの英文校閲費として使用する。同時に次なる成果に関しても論文作成を予定しているので、複数の論文の英文校閲費として考えている。
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Research Products
(8 results)