2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24550045
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
高橋 雅樹 静岡大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (30313935)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
依田 秀実 静岡大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (20201072)
仙石 哲也 静岡大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (70451680)
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Keywords | アントラセン / ルテニウム錯体 / 逆ミセル / アップコンバージョン |
Research Abstract |
本年度は、既に合成法を確立した「両親媒性構造体」を利用し、この化合物が逆ミセルに自己組織化すると知られるトルエンーアセトニトリル溶液中において、アップコンバージョン機能が発現されるか検討を試みた。始めに、当該溶液サンプルの定常蛍光発光スペクトルを測定したところ、アントラセンからのエネルギー移動を伴うルテニウム錯体由来の発光はほとんど観測されなかった。このことから、「両親媒性構造体」は逆ミセル様の会合体を形成していることが明らかとなった。この会合体サンプルに対し 473 nm レーザー光を照射したところ、アントラセンのダイマー発光波長領域に極めて微弱ながら発光スペクトルが観測され、アップコンバージョン機能発現の可能性が示唆された。しかしながら、励起光として 532 nm レーザー光を使用し再度測定を行った結果、この発光スペクトルが観測されなかったことから、この会合体サンプル内部においてアップコンバージョンが起こっていると判断するには至らなかった。次に、この会合体のトルエン溶液サンプルに対し、別途エミッターとしてジフェニルアントラセンを添加し、この混合溶液系において分子間アップコンバージョン機能が発現するか検討を試みた。473 nm レーザー光を光源として発光スペクトル測定を行った結果、ジフェニルアントラセンと帰属される蛍光発光スペクトルが明確に観測されたことより、逆ミセル会合体はアップコンバージョン機能を起こすための三重項増感剤としては十分に機能していることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度では、逆ミセル会合体自体のアップコンバージョン機能について明確な実証を行うことができなかったものの、エミッター分子に対するアップコンバージョン増感機能は存在することが明確となった。この研究成果は、今後検討を予定している新たな三重項増感分子システムでの展開において非常に有効となる知見である。このことから、当該研究はおおむね順調に進展したものと判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
逆ミセル会合体自体がジフェニルアントラセンに対し三重項増感として機能した結果を応用し、従来の「両親媒性構造体」の一部にジフェニルアントラセンを導入した分子システムを新たに開発することによって、逆ミセル会合体内部におけるアップコンバージョン機能を実現できると考えられる。
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