2012 Fiscal Year Research-status Report
ハロゲン基を利用した超持続性三重項ジアリールカルベンの創製
Project/Area Number |
24550047
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
平井 克幸 三重大学, 社会連携研究センター, 准教授 (80208793)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 三重項カルベン / ジアゾ化合物 / ハロゲン基 / 立体保護 |
Research Abstract |
いまだ実現されていない三重項カルベンの単離を目指し、三重項カルベンと反応しないハロゲン基を立体保護基として有するカルベンの前駆体として、オルト位に4個のヨードル基を有し、両パラ位にはtert-ブチル基を有するジフェニルジアゾメタンを合成した。 このジアゾ化合物をMTHFマトリックス中77 Kで光分解し、UV-visスペクトルによって対応する三重項カルベンを、350, 369, 462, 480, 506 nmに観測した。また、昇温実験により、このカルベンは200 Kまで殆ど分解せずに観測され、非常に安定であることがわかった。カルベンのESRシグナルはヨード基の重原子効果のため観測されなかったが、カルベンが分解する200 Kまでの昇温で、カルベンが分解して発生したと考えられるラジカル種を観測した。 一方、室温脱気ベンゼン中でのレーザー閃光光分解により、この三重項カルベンが半減期18.4分の現在最も長寿命な三重項ジフェニルカルベンであることが示された。また、ベンゼン中でのカルベンの減衰は二次減衰であり、生成物としてカルベンが二量化したテトラアリールエテンが得られた。また、このカルベンは三重項カルベンのよい捕捉剤として知られる酸素や1,4-シクロヘキサジエンに捕捉され、それぞれ、対応するケトンおよび二水素引き抜き反応によるジフェニルメタンを好収率で生成した。その捕捉速度定数は、それぞれ、6.5 × 105、1.5 M-1s-1と非常に小さく、反応のモードは不安定なジフェニルカルベンと同じであるが、反応自体は非常に遅いことがわかった。また、DFT計算により三重項カルベンは一重項状態よりも16.6 kcal/mol安定であり、実験結果を支持する結果が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
立体保護基としてオルト位にヨード基を4個有するジフェニルカルベンに関する研究はほぼ完遂できた。しかし、このカルベンの前駆体であるジフェニルジアゾメタンの合成に時間がかかり、2,6位に2個のヨード基を、2’,6’位に2個のトリフルオロメチル基を有するカルベンの前駆体であるジフェニルジアゾメタンの合成は現在進行中である。
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Strategy for Future Research Activity |
2,6位に2個のヨード基と4位にtert-ブチル基を有し、2',6'位に2個のトリフルオロメチル基と4'位にフェニル基を有するジフェニルジアゾメタン、および2,6位に2個のヨード基と4位にtert-ブチル基を有し、2'位に1個のトリフルオロメチル基と4'位にフェニル基を有するジフェニルジアゾメタンをそれぞれ合成する。 これら前駆体の光分解によって対応する三重項ジフェニルカルベンを発生させ、その特性化と安定性について研究を行う。 3,5位にペンタフェニルを有するトリアゾリル基を置換基として有するフェニルジアゾメタンを合成し、対応するジアリールカルベンについても同様の観測をおこない、三重項カルベンの安定化に対するハロゲン置換基の効果を検討する。 また、これらカルベンの構造とスピン分布を理論計算し、三重項カルベンの安定性を予測する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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