2013 Fiscal Year Research-status Report
ハロゲン基を利用した超持続性三重項ジアリールカルベンの創製
Project/Area Number |
24550047
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
平井 克幸 三重大学, 社会連携研究センター, 准教授 (80208793)
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Keywords | 三重項カルベン / ジアゾ化合物 / ハロゲン基 / 立体保護 |
Research Abstract |
いまだ実現されていない三重項カルベンの単離を目指し、三重項カルベンと反応しないハロゲン基を立体保護基として有するジフェニルカルベンの前駆体として、片方のオルト位に2個のヨード基とパラ位にtert-ブチル基を有し、もう一方のフェニル基に1個のトリフルオロメチル基、パラ位にフェニル基を有するジフェニルジアゾメタンを合成した。 このジアゾメタンをMTHFマトリックス中77 Kで光分解し、UV-visスペクトルによって対応する三重項カルベンを、293, 335, 500 nmに観測した。また昇温実験により、このカルベンは100 Kで減少し始めることがわかった。また同条件のESR測定では、カルベンのシグナルはヨード基の重原子効果のため観測されなかったが、120 Kに試料を昇温することによって、カルベンが分解して発生したと考えられるラジカル種を観測した。 室温脱気ベンゼン中でのレーザー閃光光分解により、この三重項カルベンは二次減衰し、半減期40 msの長寿命な三重項ジフェニルカルベンであることが示された。また、このカルベンは三重項カルベンのよい捕捉剤である酸素と1,4-シクロヘキサジエンに捕捉され、それぞれ、二分子反応速度定数は、それぞれ、1.6 × 108、1.9 × 102 M-1s-1と求まった。 これらの結果から、ヨード基とトリフルオロメチル基はよい立体保護基であるものの、3つの保護基では立体保護効果が不十分なことがわかった。 また、DFT計算による構造最適化を行い、三重項状態が一重項状態よりも15.1 kcal/molも安定であることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
10月から3月末まで大学の改修工事があり、生成物分析を実施するのに必要な装置が使用できず、また、他施設等で代替利用できるものがないことから、進捗が遅れた。
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Strategy for Future Research Activity |
2,6位に2個のヨード基と4位にtert-ブチル基を有し、2',6'位に2個のトリフルオロメチル基と4'位にフェニル基を有するジフェニルジアゾメタンを合成し、この光分解によって対応する三重項ジフェニルカルベンを発生させ、その特性化と安定性について研究を行う。 3,5位にポリフルオロフェニルを有するトリアゾリル基を置換基として有するフェニルジアゾメタンを合成し、対応するジアリールカルベンについても同様の観測をおこない、三重項カルベンの安定化に対するハロゲン置換基の効果を検討する。 また、これらカルベンの構造とスピン分布を理論計算し、三重項カルベンの安定性を予測する。
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Research Products
(12 results)