2012 Fiscal Year Research-status Report
ボトムアップアプローチに基づいた電子欠損性アルミニウムクラスターの合成と物性解明
Project/Area Number |
24550048
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
吾郷 友宏 京都大学, 化学研究所, 助教 (90466798)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 有機元素化学 / 有機金属化学 / アルミニウム / クラスター |
Research Abstract |
金属原子が数個~数十個集積した金属クラスターは、単核の金属錯体ともバルク金属とも異なる性質を示すことから物性化学や触媒化学といった様々な分野から関心がもたれている。特に13族元素クラスターは、3p軌道間の共役によって分子全体に非局在化したLUMOが形成されるため高い電子受容性が期待される。これまでにホウ素クラスターについては盛んに研究が行われており、機能性材料や医療といった他分野への応用もなされている。一方、高周期元素類縁体であるアルミニウムクラスターに関しては安定な化合物の例が非常に少なく、性質は明らかにされていない。また、これらのクラスターはアルミニウムハロゲン化物の還元で生じた複雑な混合物から低収率で得られたものであり、特定の構造のクラスターを安定に供給できないため、物性や反応性を検討するのが困難であった。 本研究では、小サイズのアルミニウムクラスターの精密合成法を開発し、それらの構造・性質をNMRやX線結晶構造解析といった分子科学的な構造解析手法によって解明する。本年度は、最小クラスターである二核クラスターの合成について検討を行った。まず、二価アルミニウムクラスターであるジアルマン(RR’Al-AlRR’)の合成について検討し、アルミニウム上の置換基Rを非常にかさ高くすることで、もう一方の置換基R’を反応性のハロゲン置換基としながらも高い熱安定性を有するジアルマンを得ることができた。ジアルマンを還元することで一価アルミニウムクラスターであるジアルメン(RAl=AlR)の合成を検討したところ、発生したジアルメンと溶媒のベンゼンとのDiels-Alder付加体が定量的に生成し、ジアルメンの高い反応性が示唆された。さらに、ジアルメン-ベンゼン付加体から他の不飽和炭化水素へのジアルメン移動反応を見出し、この付加体がジアルメン等価体としての反応性を有することを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度の研究実施計画のうち、安定な1,2-ジブロモジアルマンの合成条件の最適化と構造・性質の解明については予定どおり研究を遂行し、国内外の学会での発表と論文発表を行なっている。 次に、1,2-ジブロモジアルマンを還元することでジアルメンの合成を検討したところ、ジアルメンの直接観測および単離には至っていないものの、溶媒のベンゼンによってジアルメンが捕捉された環化付加体が定量的に得られたことから、ジアルメンの発生には成功したものと考えている。また、得られたジアルメン-ベンゼン付加体から種々の不飽和炭化水素へのジアルメン移動反応を見出し、この付加体が高反応性化学種であるジアルメンの等価体としての性質を持つことを明らかにした。このような反応性は研究計画立案時には予想していなかったものであり、他の高周期典型元素化学種には無い二核アルミニウム化学種の特異性の一つであると考えられる。 ジアルメン-ベンゼン付加体から他の低原子価アルミニウム化学種へのジアルメン移動反応を利用することで、三核以上の高次クラスターのボトムアップ合成が可能になると期待されるため、次年度以降は付加体をジアルメン等価体としたアルミニウムクラスター合成を検討する。
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Strategy for Future Research Activity |
現在のところ、第一の目的化合物であるジアルメンの単離には至っていないが、ジアルメン-ベンゼン付加体のジアルメン等価体としての反応性を活用することでアルミニウム三核以上のクラスターのボトムアップ合成が可能であると考えている。具体的には、ジアルメン-ベンゼン付加体に対し既知の一価アルミニウム化学種を作用させることで、クラスターを成長させる手法を検討し、得られたクラスターの構造・性質を各種スペクトル測定および単結晶X線結晶構造解析により明らかにする。また、ジアルメン-ベンゼン付加体に対し、アルケンやアセチレンといった不飽和炭化水素や、有機典型元素化合物、または遷移金属錯体を作用させることで、アルミニウムと他の元素との混合型クラスターの合成についても検討する。 一方、最も基本的なクラスターであるジアルメンの構造・性質の解明には、安定な化合物としての合成・単離が必須である。現在用いている保護基ではジアルメンの安定化が不十分であると考えられるため、保護基の電子的・立体的な性質を再検討しジアルメンの単離を図る。具体的には、電気陽性なケイ素置換基を導入したジアルメンの合成を検討する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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Research Products
(5 results)