2013 Fiscal Year Research-status Report
ボトムアップアプローチに基づいた電子欠損性アルミニウムクラスターの合成と物性解明
Project/Area Number |
24550048
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
吾郷 友宏 京都大学, 化学研究所, 助教 (90466798)
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Keywords | 有機元素化学 / アルミニウム / クラスター / アルミレン / ジアルメン / 有機金属化学 |
Research Abstract |
金属原子が数個から数十個集積した金属クラスターは、単核の金属錯体ともバルク金属とも異なる性質を示すことから、物性化学や触媒化学といった様々な分野から関心が持たれている。特に13族元素を集積したクラスターは、空の3p軌道間の相互作用によって分子全体に非局在化したLUMOが形成されるため、高い電子受容性が期待される。これまでにホウ素クラスターについては盛んに研究が行われており、機能性材料や医療材料といった応用研究も活発であるが、高周期元素類縁体であるアルミニウムクラスター化合物に関しては、安定な化合物の例が非常に少なく構造・性質は未解明の点が多い。また、過去のアルミニウムクラスター化合物の合成例は、アルミニウムハライドの還元で生じた複雑な混合物から低収率で単離・構造決定されたものがほとんどであり、特定の構造のクラスターを精密かつ大量に合成することが困難であった。 本研究では、小サイズのアルミニウムクラスターの精密合成法を開発し、それらの構造や性質をNMRやX線結晶構造解析といった分子科学的手法を用いて詳細に解明する。本年度は、昨年度の研究に引き続いて、アルミニウム間二重結合化学種ジアルメン(RAl=AlR)の合成等価体であるジアルメン-ベンゼン付加体の反応性について検討を行った。付加体から他の不飽和炭化水素化合物へのジアルメンユニット移動反応が穏和な条件で進行することを見出すとともに、白金錯体との反応では、アルミレン(RAl)が白金に配位した新しい構造の錯体が得られたことから、付加体がアルミレンの等価体としての性質を持つことを明らかにした。さらに、ジアルメンの発生条件を検討したところ、三つのアルミニウム原子からなる中性三角形クラスター化合物[RAl]3の単離・構造決定に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度の研究計画のうち、アルミニウム三核クラスターの合成については、ジアルメン(RAl=AlR)の発生条件を検討することで合成・単離に成功し、その特異な構造をX線結晶構造解析により明らかにした。次年度は、ジアルメン-ベンゼン付加体をジアルメン源として用いることで、三核以上のアルミニウムクラスターの精密合成について検討する予定である。 また、アルミニウムと他の典型元素や遷移金属元素を混合したヘテロクラスターの系については、硫黄、リン、またはセレンをアルミニウムと混合したクラスターの合成を検討し、アルミニウム-リン混合クラスターおよびアルミニウム-硫黄混合クラスターの生成を示唆する結果を得た。現在、これらの反応の生成物の単離・構造決定について検討を行っている。 さらに、ジアルメン-ベンゼン付加体から発生する反応活性種を捕捉する目的で、白金錯体[Pt(PCy3)2]との反応を行ったところ、2配位アルミニウム原子と白金原子間に結合を有する新規なアルミレン白金錯体[ArAl=Pt(PCy3)2]が生成した。この錯体の生成は、ジアルメン-ベンゼン付加体がジアルメン等価体としての背反応性のみならず、アルミレン等価体としての性質も有していることを示すものである。本反応で得られた錯体のアルミニウム-白金結合長は既報のアルミレン白金錯体に比べ短縮しており、理論計算からもアルミニウムー白金間に多重結合が存在することが示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
現在のところ当初の目的化合物であったジアルメン(RAl=AlR)の単離や直接観測には至っていないが、ジアルメンーベンゼン付加体のジアルメンまたはアルミレンの合成等価体としての反応性を活用することで、三核以上のアルミニウムクラスターの合成が可能であると考えている。また、ケイ素やゲルマニウム、リンといった他の典型元素との混合クラスターの合成についても検討する予定である。 さらに、ジアルメン-ベンゼン付加体から反応中間体として発生していると考えられるジアルメンやアルミレンを捕捉するために、N-ヘテロ環状カルベンなどのルイス塩基を作用させることでルイス塩基錯体としての単離を試みる。
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Research Products
(12 results)