2013 Fiscal Year Research-status Report
テトラチエニルメタンの部分官能化体を用いた三次元拡張π電子系化合物の自在合成
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24550049
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Research Institution | Senshu University |
Principal Investigator |
松本 幸三 専修大学, 経営学部, 准教授 (40311766)
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Keywords | オリゴチオフェン / 合成有機化学 / 構造有機化学 / デンドリマー / 拡張π電子系化合物 / 材料科学 |
Research Abstract |
一つの炭素原子に四つのチオフェン環が結合したテトラキス(2-チエニル)メタン(1)の非対称型の誘導体や1の骨格を基盤とする三次元拡張型オリゴチオフェン類を自在にかつ、選択的に合成することが本研究の目的である。この目的を達成するため、前年度において1の四つのチオフェン環のうち1か所から3か所を臭素化した誘導体をそれぞれ合成、単離した。これら三種の部分臭素化体は目的の三次元拡張型オリゴチオフェン類を合成するための有用な鍵中間体である。 今年度はこれらの鍵中間体を用いて1の骨格を基盤とする新規拡張π電子化合物として、新たにデンドリマー型の分子(2)を合成した。具体的には、1のテトラスズ体に対して四分子の1のモノ臭素化体を作用させるカップリング反応により、約40% の収率でデンドリマー2を合成した。2は安定な無色の結晶性の化合物である。 デンドリマー2のプロトンNMRおよびカーボン13NMRは対称性の高い少数のシグナルのみ観測されたことから、溶液中でチオフェン環は素早く回転していることが分かった。また、デンドリマー2のsp3炭素の化学シフト値は53.5, 53.3 ppmに観測され、これまでに合成された化合物1の誘導体とよく似た結果が得られた。また、デンドリマー2は238 nm と330から350 nmの紫外領域に2つの吸収を示した。それぞれチオフェン部とビチオフェン部による吸収と考えられる。一方、蛍光スペクトルは423 nmを中心に幅広い蛍光を示し、以前合成したsp3 炭素原子に4つのビチオフェンを結合した誘導体とよく似た結果を与えた。励起波長355 nm での蛍光に比較して、238 nm で励起した時の蛍光が著しく弱かったことからこの蛍光がビチオフェン部位からのものであること、末端のチオフェン環からビチオフェン部位へのエネルギー移動はほとんど起こっていないことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
テトラキス(2-チエニル)メタン(1)の骨格を基盤とする様々な三次元拡張型オリゴチオフェン類を合成するという目的のもとで、鍵中間体である部分的に臭素化された三種類の誘導体が合成・単離されたことは、目的の分子を合成するうえで非常に重要である。さらに今回新たにデンドリマー分子2の合成に成功したことで、鍵中間体の有用性を示すことができたと考えられる。ただ、現在のところ新たに合成できた分子としては化合物2のみなので、化合物1の部分臭素化体を原料としてさらに多くの新規拡張π電子系化合物を合成する必要があると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
テトラキス(2-チエニル)メタン(1)の三種類の部分臭素化体の合成が可能であることが示されたことから、化合物1の骨格を基盤とする種々の三次元拡張π電子化合物の合成が選択的かつ効率的に可能であると期待される。 今後の研究の推進のためには化合物1そのものの合成も含めて、三種類の部分臭素化体の合成・単離のスケールアップが望まれる。特に臭素を一つだけ導入した誘導体については、選択的に合成できたわけではなく、効率の良い精製法を検討するか選択的に得られる合成法を開発する必要がある。化合物1の合成については合成中間体であるトリス(2-チエニル)メタンと2-シアノ-5-フルオロチオフェンがすでに数十グラムのスケールでの合成が可能であり、本年度中に化合物1の大量合成も可能と期待される。化合物1と類似の合成法で得られる臭素を二つ有する誘導体、化合物1の合成途中に臭素化の反応を追加するだけの臭素三つの誘導体はともに大量合成も可能と考えられる。 また、これらの部分臭素化体の有用性を示すためにこれらを原料としてさらなる新規三次元拡張π電子系化合物の合成を行う必要がある。デンドリマー2の合成を達成したことで、臭素を一つ有する誘導体の有用性はある程度示せたが、臭素を2コあるいは3コ有する誘導体についてはさらなる検討が行えていない。具体的にはドナーとアクセプターを併せ持つ1の誘導体を合成することを考えている。原料である部分臭素化体の臭素の数によりドナーあるいはアクセプターの数を調節することができ、物性を系統的に比較しやすい利点がある。
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Research Products
(7 results)