2012 Fiscal Year Research-status Report
芳香族小クロモフォアを骨格資源として活用する光による多環状骨格への変換
Project/Area Number |
24550054
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
岡本 秀毅 岡山大学, 自然科学研究科, 准教授 (30204043)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 光反応 / シクロファン / アザシクロファン / フェナセン / 置換基効果 / 多環状化合物 |
Research Abstract |
ベンゼン,ナフタレン,フェナントレン等の芳香族小クロモホアを骨格資源として利用し,多環状化合物を構築する反応の開拓を目的として,平成24年度は以下の研究を実施した. (1)アザシクロファン類の合成:アザシクロファンは2個のベンゼン環のパラ位同士を窒素原子でつないだ化合物である.アザシクロファンのベンゼン環同士の反応性を系統的に調べるため,ベンゼン環上にメチル基あるいはフッ素を導入した新規誘導体を合成した.また,架橋鎖の窒素原子上の置換基についても,カルボキシアミド,スルホンアミド等の誘導体を得た. (2)アザシクロファン類の光反応:メチル置換誘導体の光反応では二個のベンゼン環のパラ位が結合した三環型のp,p’-ジベンゼン骨格を高効率で与えることがわかった.今回,アザシクロファンの光反応において初めてp,p’-ジベンゼンの生成を確認した.また,フッ素置換アザシクロファンの光反応では,二個のベンゼン環の4個の炭素原子が結合を形成し,五環型のカゴ型ジエンを与えることを見いだした.アザシクロファンの光反応性は,ベンゼン環上の置換基の影響を顕著に受けることを見いだした. (3)フェナセン骨格の構築:ナフタレンや,フェナントレンを芳香族骨格資源として,ベンゼン環がジグザグに拡張して行くフェナセン骨格の合成を検討し,ピセン([5]フェナセン)のカルボン酸エステル誘導体を高効率で構築する経路を確立した.また,光フローリアクタを自作し,1,2-ジナフチルエテンからピセン合成を簡略化できた.市販では高価で少量しか手に入らないピセンを大量に供給することを可能にした.これによりピセンの分光特性を検討し,通常は観測されない高い励起状態(S2状態)からの蛍光を発見することができた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)アザシクロファン類の光反応 アザシクロファンの光反応がベンゼン環上および架橋窒素原子上の置換基の影響を顕著に受け,種々の多環状ベンゼン二量体骨格を生成することを新たに見いだすことができた.現在までに4種類の多環状ベンゼン二量体骨格生成を確認した. (2)多環状フェナセン骨格の構築 多環状フェナセン骨格はジアリールエテン骨格のMallory光環化で構築できることはすでに確立されている.計画段階では,種々の多環状フェナセン骨格をバッチ反応により構築する予定であった.当初の計画にはなかったが,この段階に連続フロー光反応を適用することで,Mallory光環化の省力化,大スケール化が可能になり,特に特異な分光特性,有機電子材料の観点から注目される多環状フェナセン骨格が容易に供給できるようになった.
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Strategy for Future Research Activity |
(1)アザシクロファン類の光反応:(a)アザシクロファンの構造と光反応様式との相関を明らかにするため,アザシクロファンの置換基をさらに変えた誘導体を合成し,光反応性を調べる.(b)アザシクロファンの架橋差の数の違いが光反応性に及ぼす影響について研究する.架橋差の数が3の場合は光に対して不活性であるため,4架橋誘導体を合成し,光特性を明らかにする.(c)一般にベンゼンに量体は合成が困難で,不安定なため,構造や反応性の知見が極めて少ない.本研究課題で得られる多環状ベンゼン二量体の構造,反応性を明らかにする. (2)多環状フェナセン骨格の構築:(a)ジアリールエタンおよび,ジアリールエテンを前駆体として系統的に多環状のフェナセンの構築方法を検討する.(b)24年度に検討した連続フロー光反応の手法を適用することにより光反応の省力化,高効率化を目指す.(c)ジアリールエタンから高次フェナセンを誘導するための光反応条件を最適化する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
・物品費:844千円(試薬,ガラス器具等) ・旅費:200千円(成果発表) ・謝金・人件費:100千円(論文校閲等)
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Research Products
(9 results)