2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24550055
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
小島 聡志 広島大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (70215242)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | フラン / 室温 / 弱酸 / 第4級炭素 / ジカルボニル化合物 |
Research Abstract |
2-ベンジルオキシカルボニルシクロペンタノンをドナー,トランス-4-オキソ-2-ペンテナールをアクセプターとするマイケル反応がアミン存在下において促進されることを既に見出しているが,アミンのない条件下で同様の反応を行ったところ,2位に第4級不斉炭素原子を置換基として有するフランが室温という穏やかな状況で形成することを見出した。このようにアルケンの幾何学の違いとわずかな反応条件の違いだけで,生成物が作りわけできる興味深い結果を得ることができた。このフラン化反応は,ヘキサフルオロイソプロピルアルコールや安息香酸のような弱い酸で加速され,強い酸では基質が分解するために進行しないことがわかった。詳細な検討の結果,効率よくフランを得るには,アクセプターがシスアルケンでなければならないことがわかった。そして,アミンが存在する場合は,そのマイケル付加中間体によって,シスアルケンがトランスアルケンに容易に異性化するためにフランが形成しないことが明らかとなった。立体障害のあるアミンでは異性化が促進されないことから,アミンのマイケル付加が異性化に関係していることが裏付けられた。強酸とアミンからなる塩は,弱酸となるが,このような塩ではフラン形成が見られなかった。また,ドナーについては,本反応のように穏やかな条件下でもエノール化しやすいことや立体障害がないことが必要で,エノールの求核性が高いかあるいはエノールが互変異性体であるケト体と比べて不安定であることが望ましいことが示唆された。これらの条件を満たすドナーについては,このフラン化反応が汎用性のあるものであることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予備的な検討で,2-ベンジルオキシカルボニルシクロペンタノンをドナー,トランス-4-オキソ-2-ペンテナールをアクセプターとするマイケル反応がアミン存在下において促進され,アミンのない条件下ではフラン形成反応が室温という穏やかな状況で進行することを見出していたが,細かい検討をすることによって,弱い酸で加速され,強い酸では基質が分解することを見出し,促進剤として何がふさわしいかを確定することができた。また,アクセプターの異性化実験を組み合わせることによって,アクセプターとしてシス体の4-オキソ-2-エナールが必要であることが明らかとなった。また,ドナー側の検討によって,どのような基質であれば反応が進行するかがわかった。これらは,今後予定している研究内容を遂行していく上で重要な知見である。その一方で,予定していたシス-4-オキソ-2-ブテン酸エステルをアクセプターとして用いた検討およびトランス-4-オキソ-2-エナールの光異性化を伴う反応の検討までは及ばなかった。しかし,前半で述べた結果をまとめ,速報(Chemistry Letters 2012, 1586-1587)として報告することができたので,滑り出しとしては概ね順調であると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の検討の結果,現在までのところ期待した通りの結果が得られているので,申請時に計画した内容でこのまま研究を推進していく予定である。即ち,(1)反応基質という観点で汎用性を広げるため,アクセプターとしてシス-4-オキソ-2-ブテン酸エステルを検討する。この検討では,生成物として天然物の部分構造として広くみられる2-フラノンが得られる。(2)光反応を用いた反応系中でのトランス-4-オキソ-2-エナールのシス体への異性化を伴うフラン化反応の検討をする。この反応が成功すれば,シス体よりも安定で合成が容易であるトランス体のアクセプターを有効に利用できることが可能となる。また,アクセプターの合成が幾何選択的でなくても良いことになる。(3)キラル補助基を用いたシス-4-オキソ-2-エナールへの1,2-付加による2位に不斉第4級炭素置換基をもつフランの合成法の検討をする。(4)触媒不斉反応へ応用することによって,効率的な不斉反応へと展開する。(5)エナミンを求核試剤として用いたフラン化反応の検討をする。この検討が成功すれば,β―ジカルボニル以外へとドナー基質の範囲を広げることが可能となる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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Research Products
(7 results)
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[Journal Article] Synthesis, Characterization and Spectroscopic Analysis of Antiaromatic Benzofused Metalloporphyrin Species.2012
Author(s)
S. Sugawara, Y. Hirata, S. Kojima, Y. Yamamoto, E. Miyazaki, K. Takimiya, S. Matsukawa, D. Hashizume, J. Mack, N. Kobayashi, Z. Fu, K. M. Kadish, Y. M. Sung, K. S. Kim, and D. Kim
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Journal Title
Chemistry-a European Journal
Volume: 18
Pages: 3566-3581
DOI
Peer Reviewed
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