2012 Fiscal Year Research-status Report
6配位カルコゲノニウム塩の創製とその応用を目指した基盤研究
Project/Area Number |
24550060
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
佐藤 総一 首都大学東京, 理工学研究科, 准教授 (90280908)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 高配位化合物 / テルロニウム塩 / カルコゲン元素 |
Research Abstract |
3配位テルロニウム塩は中心のテルル原子上に+1の電荷を有するため、配位子が適当な位置に非共有電子対を持つ場合、その部位が分子内でテルル上に配位した化合物が得られることが知られている。我々はこの化学種に着目して、本研究の目的とする新規化合物、2-フェニルピリジン配位子をテルル原子上に3つ導入したテルロニウム塩の合成を試み、その単離、ならびに構造解析に成功した。 2-フェニルピリジンから調製した2-フェニルピリジンのヨウ素体を、ブチルリチウムでリチオ化した後、約0.3等量の四塩化テルルと反応させたところ淡褐色固体1を収率34%で得た。さらに1に6フッ化りん塩を作用させることにより対アニオン交換を行い、エタノールで再結晶したところ、無色の固体2を収率28%で得ることに成功した。無色固体の質量分析および元素分析を行ったところ、目的化合物であるテルロニウム塩2の組成と一致した。また各種NMR測定からは、溶液中で3つの2-フェニルピリジン配位子が等価であることが分かった。2は融点300度以上の非常に安定な化合物であり、X線結晶構造解析を行ったところ3つの2-フェニルピリジン配位子がフェイシャル型でテルル上に配位した、6配位、歪んだ八面体構造となっていることが分かった。3つのピリジル基は、窒素原子が全てテルル原子の方向を向いており、窒素―テルル原子間の静電的相互作用の存在が示唆される。すべての窒素原子はテルル上の非共有電子側に位置しており、テルルー窒素の結合距離が長いのは、非共有電子対との反発のせいであると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2-フェニルピリジン型配位子の合成、ならびに目的とする6配位テルロニウム塩の合成に成功したことから、おおむね順調に研究は進んでいると考えられる。 24年度の研究の最も重要な研究内容である、6配位テルロニウム塩の合成法の確立、また実際の単離、さらにはその詳細な構造解析まで達成できたことから、本研究の前半部分の目標は達成された。今後は新たな2-フェニルピリジン型配位子の合成の継続と、得られた新規6配位テルロニウム塩の物性測定、理論計算による見積もり、応用への展開となるが、今のところ計画通りに進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
新たな2-フェニルピリジン型配位子の合成の継続と、得られた新規6配位テルロニウム塩の物性測定、理論計算による見積もりを行う。 6配位テルロニウム塩の対アニオンを光学活性アニオンに変換し、溶液中でのデルタ体、ラムダ体間の構造変化の挙動を解明する。また6配位テルロニウム塩のサイクリックボルタンメトリーを測定し、その酸化還元特性を見積もる。さらに理論計算を用いた新たな結合様式の解明を行う。特にテルル原子上に非共有電子対が存在したままなのかどうかについての解明に興味が持たれる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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Research Products
(2 results)