2013 Fiscal Year Research-status Report
6配位カルコゲノニウム塩の創製とその応用を目指した基盤研究
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24550060
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
佐藤 総一 首都大学東京, 理工学研究科, 准教授 (90280908)
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Keywords | 高配位化合物 / 6配位化合物 / テルロニウム塩 / セレノニウム塩 / カルコゲン元素 / 八面体 / 分子内配位 |
Research Abstract |
我々はこれまで、3つのppy配位子を有する6配位テルロニウム塩1の合成、単離を行い、最終的にX線結晶構造解析にて、その結晶状態での精密な構造解析を行うことに成功しt。今年度は、さらに中心原子をセレン原子に代え、3つのppy配位子を有する6配位セレノニウム塩2の合成を試みた。 2-フェニルピリジンから調整した2-フェニルピリジンのモノヨウ素化体を用いて、一旦n-ブチルリチウムにてリチオ化した後、0.3当量の四塩化セレンを作用させたところ、セレン原子上にppy配位子が3つ結合し、塩化物イオンが対アニオンとなった6配位セレノニウム塩2が13%の収率で得られてきた。さらに得られた2に対して、6フッ化リン塩を作用させることにより対アニオン交換を行い、非常に安定な6配位テルロニウム塩3を46%の収率で得ることに成功した。得られた3については各種NMR、質量分析、元素分析によって同定された。また3はエタノールにて再結晶したところ、単結晶が得られ、X線結晶構造解析を行うことができた。その構造は対称性の高い6配位化合物で、セレン原子周りの配座は歪んだ八面体構造となっており、対応するテルル化合物と良く似ていた。また、3つのppy配位子はフェイシャル型に配位し、結晶中ではΔ体とΛ体のラセミ結晶であることも分かった。次にテルロニウム塩、セレノニウム塩共にDFT計算にてそれら分子軌道を見積もったところ、いずれもHOMOに中心原子上に非共有電子対が存在すると考えられる軌道が見られた。このことから、いずれのカルコゲニウム塩も中心原子上に非共有電子対を有し、且つ6配位になってることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
6配位テルロニウム塩に引き続き、6配位セレノニウム塩の合成に成功したことから、おおむね順調に研究は進んでいると考えられる。またそれぞれの生成物についてのレドックス研究、ラセミ化速度の見積もりについては一通りその挙動解析を行った。中心原子上の結合様式については、現在AIM計算の習熟中であり26年度に全て計算にて見積もる予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
対応する6配位テルロニウム塩、セレノニウム塩に引き続き、対応するスルホニウム塩の合成を試みる予定である。原子半径の小さい硫黄上に非共有電子対を残したまま6配位化するので、原子周りの空間的立体障害がネックとなるが、幾つかの手法で対応する化合物の合成を試みる予定である。 AIM計算については、この分野の先駆者である和歌山大学の中西教授のご指導をいただきながら、カルコゲンー窒素結合の有意性を実証し、得られたカルコゲニウム塩が、14-カルコゲンー6という新たな化学種であることを証明する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
前年度購入した試薬・溶媒が残っていたため、それらを流用することができ経費を浮かすことができた。また最終年度は新たな合成が必要であり、そちらの経費が予想以上にかかることが予想されるため、25年度の経費節約を行った。 新たな化合物合成のための試薬。溶媒の購入に充てる。新規AIM理論計算費用にも充てる予定である。
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Research Products
(7 results)