2012 Fiscal Year Research-status Report
緑色細菌のグリセロ脂質ライブラリー:脂質の微細構造から見た光合成調節機構の解明
Project/Area Number |
24550065
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
溝口 正 立命館大学, 総合科学技術研究機構, 教授 (90343665)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 脂質 / 光合成 / 生体分子 / 超精密計測 |
Research Abstract |
1. 蒸発光散乱検出器をオンライン接続した高分解能LCMSに基づき、緑色光合成細菌をモデル生物としたグリセロ脂質ライブラリーの構築を行った(本研究の第一の目的)。生育温度(30-55℃)が異なる7種類の緑色細菌に対して、網羅的な解析を行った。その結果、細菌の生育温度とグリセロ糖脂質分子の脂肪酸の炭素鎖長に明確な相関が確認された(生育温度の上昇に比例し脂肪酸鎖長も増加)。更に、この脂肪酸鎖長の連続的な伸長は、細菌が生産するクロロフィル色素分子の炭化水素鎖長とも相関性が見られた。これらの疎水性炭化水素鎖長の生育温度に対する依存性は、疎水性相互作用に基づく光合成器官の耐熱性の獲得戦略と解釈された。得られた成果は、学術論文1報として公表した:Mizoguchi et al., Photosynth. Res. 114, pp. 179-188 (2013年). 2. 見えない脂質分子の微細構造が誘起する生体膜特性への影響を、見えるクロロフィル色素をプローブとして評価した(本研究の第二の目的)。緑色細菌の光収穫アンテナ器官(=グリセロ脂質一分子膜より成るミセル様構造体)を生体膜モデルとし、pH変化によるプロトン透過性の評価を行った。アンテナ器官に内包されるクロロフィル色素の化学的・分光学的特性を活用することで、プロトン透過性(=アンテナ器官の耐酸性)へのグリセロ脂質分子の微細構造の影響を検証した。その結果、脂肪酸部の不飽和構造がプロトン透過性に関与することが確認された。得られた成果は、学術論文1報として公表予定である:Mizoguchi et al., Bioorg. Med. Chem., in press (2013年) (doi: 10.1016/j.bmc.2013.04.030).
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では以下の二つを主たる目的として設定した。 (目的1) 緑色光合成細菌をモデル生物としたグリセロ脂質ライブラリーの構築 1-1) 緑色細菌が合成するグリセロ脂質の組成・微細構造への様々な生育環境因子(本年度は温度因子に対して実施)の影響を評価した。30-55℃の範囲で生育する7種類の緑色細菌のグリセロ糖脂質組成を網羅的に解析することで、光合成を駆動する光合成器官の耐熱性獲得に関する知見を得た。学術論文1報として成果を公表した。1-2) 生体膜特性の制御因子の同定を、グリセロ脂質分子の積極的な構造改変より試みた。グリセロ脂質の脂肪酸部における特異な不飽和構造(=シクロプロパン環構造)の形成を、化学的に阻害することに成功した。この構造改変により、シクロプロパン環構造が光合成器官の酸耐性の獲得に重要な働きを担うことが確認された。学術論文1報として成果公表を予定している(印刷中)。1-3) 生体膜と光合成器官のグリセロ脂質組成を精査することで、光合成器官の分化・形成メカニズムに関する知見を得る。未着手。H25年度に実施予定。 (目的2) 見えない脂質分子の微細構造が誘起する生体膜特性への影響を、見えるクロロフィル色素をプローブとして評価 (1)で構築したライブラリーに基づき、グリセロ脂質組成の異なる光合成器官を単離し、その酸処理からプロトン透過性を評価した。ここで、光合成器官に内包されるクロロフィル色素の化学的・分光学的特性を利用することで、見えない脂質分子の影響を内包クロロフィル色素をプローブとして評価することに成功した。学術論文1報として成果公表を予定している(印刷中)。
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Strategy for Future Research Activity |
(1) 緑色細菌が合成するグリセロ脂質の組成・微細構造への様々な生育環境因子の影響を検証する(グリセロ脂質ライブラリーの構築その2)。光因子による影響を、LED光源を用いることで、光の強度・質という観点から解析する。 (2) 生体膜と光合成器官のグリセロ脂質の組成を精査することで、光合成器官の分化・形成メカニズムに関する知見を得る。 (3) グリセロ脂質解析システムの感度の向上を試みる((2)項を効率的に実施するため、微量サンプルに対応可能な系に進化させる)。 以下の項目は、上記(1)-(3)項の実施状況に応じて行う。 (4) グリセロリン脂質系への展開をはかる。これまでは緑色細菌をモデル生物としたそのグリセロ糖脂質を解析対象としてきた。生体膜を構成する主たるグリセロリン脂質への応用を視野に入れる。 (5) グリセロ脂質分子の積極的な構造改変を指向し、分子生物学的手法に基づく触媒遺伝子群の探索とその変異株作成を継続する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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Research Products
(39 results)