2013 Fiscal Year Research-status Report
緑色細菌のグリセロ脂質ライブラリー:脂質の微細構造から見た光合成調節機構の解明
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24550065
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
溝口 正 立命館大学, 総合科学技術研究機構, 教授 (90343665)
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Keywords | 脂質 / 光合成 / 生体分子 / 精密計測 |
Research Abstract |
緑色光合成細菌をモデル生物とした糖脂質の網羅的な構造・組成解析を、蒸発光散乱型検出器(ELSD)をオンライン接続したLCMSを用いて行った。糖脂質分子を構成する二つのパーツ(糖構造と脂肪酸部の微細な構造)に焦点を絞り、その構造や組成比への生育環境因子の及ぼす影響を検証した。緑色光合成細菌の生育環境因子として、温度と光の質(=波長)に着目した。温度因子として、約30~60℃を至適温度する緑色光合成細菌の糖脂質を網羅的に解析した。その結果、至適温度の上昇にともない、糖構造の改変(単糖から二糖へ)、脂肪酸の不飽和構造の改変(シクロプロパン環化を経由した飽和型構造へ)を確認した。光因子として、赤、青、緑の三種類のLED光源を用いた「光の質」という観点より、糖脂質構造・組成への影響を検証した。より光の精度を高めるために、キセノン光源と各種バンドパスフィルターを用いた質の改善にも着手した(半値幅10 nmの輝線)。効率的なグリセロ脂質の解析を行うためにELSD検出器の増設を行い、微量サンプルへの対応策として、HPLCの超高速化にも着手した。緑色光合成細菌の糖脂質の人為的な構造改変として、構造特異的な阻害剤の利用と、触媒遺伝子群の探索とその変異株の作成も併せて行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、以下の2点を主たる研究目的として設定した。 目的1:緑色光合成細菌をモデル生物としたグリセロ脂質ライブラリーの構築。 至適生育温度の異なる緑色光合成細菌に対して、網羅的に合成される糖脂質の構造・組成解析を行った。細菌の生育温度と糖脂質の構造に明確な相関性が確認でき、生物における耐熱性獲得に関する知見を得た。得られた成果は、以下の論文として公表した:T. Mizoguchi et al., Photosynth. Res. 114 (2013) 179-188。 目的2:見えない脂質分子の微細な構造が誘起する生体膜特性の影響を、見えるクロロフィル色素をプローブとして評価するシステムの構築。緑色光合成細菌の光収穫用アンテナ器官であるクロロゾーム(=糖脂質の一分子膜より成るミセル様構造体)を単離し、内包されるクロロフィル色素をプローブとして用いることで、酸処理による糖脂質分子膜へのプロトン透過性を評価することに成功した。得られた成果は、以下の論文として公表した:T. Mizoguchi et al., Bioorg. Med. Chem. 21 (2013) 3689-3694。 本研究で構築した緑色光合成細菌の糖脂質解析システム(ELSD-ESI-LCMS)に対して、複数の共同研究の申し込みがあった。これらの共同研究を積極的に推進することで、本研究課題の更なる発展が期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
未着手な課題として、以下の2点があげられる。 課題1:光合成膜と光収穫用アンテナ器官(クロロゾーム)のグリセロ脂質の組成比較によるクロロゾームの分化・形成メカニズムに関する知見の獲得。 課題2:糖脂質に加えて、リン脂質やトリアシルグリセロールを対象とした解析システムの構築。 これらの課題の達成に超高速HPLCが威力を発揮するものと考える。加えて、次の点を継続して実施し一定の成果を得たい。緑色光合成細菌の生育環境因子としての光の質と蓄積される糖脂質の構造・組成解析。微量サンプルへの対応として超高速HPLCを用いたグリセロ脂質解析システムの高感度化。緑色光合成細菌の糖脂質合成遺伝子群の探索とその変異株の作成。本研究で構築・進化させたグリセロ脂質解析システムを駆使して、種々の共同研究を積極的に推進して行きたい。
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Research Products
(42 results)