2012 Fiscal Year Research-status Report
ポルフィリンを基盤とする光誘起電子移動反応系の構築とダイナミックス
Project/Area Number |
24550075
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Aichi University of Education |
Principal Investigator |
稲毛 正彦 愛知教育大学, 教育学部, 教授 (20176407)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高木 秀夫 名古屋大学, 物質科学国際研究センター, 准教授 (70242807)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 金属錯体化学 / 人工光合成 / ポルフィリン / 電子移動反応 |
Research Abstract |
申請者はこれまでに金属ポルフィリン錯体の配位子置換反応や光化学反応、電子移動反応などをレーザー分光などの各種分光法を駆使して調べ、その反応性を支配する要因を分子構造や電子状態の観点から明らかにしてきた。その中で、金属ポルフィリン錯体と共存する遷移金属イオンとの相互作用によって、前者の励起状態の性質が大きく影響を受けることを見出した。今年度の目的は、これらの知見を基盤としてさまざまな電子供与性または電子受容性分子を結合させた二成分系を合成して、それらの化合物の酸化還元反応や蛍光特性を明らかにするとともに、レーザー分光を利用して光誘起電子移動反応の反応性、および、電荷移動状態の特性を明らかにすることである。 用いた化合物は、周辺部に2,2’-ビピリジンを結合した亜鉛(II)ポルフィリン錯体である。このようなポルフィリン錯体複合系の励起状態の性質を蛍光スペクトル、過渡吸収スペクトルを利用して調べ、ポルフィリン錯体と周辺部のビピリジンユニットとの間の電子的相互作用を明らかにした。また、第一遷移金属イオン共存下でのこれらのポルフィリン錯体複合系の光化学反応を各種分光法を用いて調べた。その光化学的挙動に最も大きな効果を示したのは銅(II)イオンであり、ポルフィリン部分のレーザー励起によりポルフィリンから銅(II)-ビピリジンユニットへの光誘起電子移動が起こることを見出した。この分子内電子移動反応の量子収率や逆電子移動反応による電荷分離状態の消失のダイナミックスを調べ、これらの光化学的性質とポルフィリン錯体複合系の分子構造の関係を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度には、まず亜鉛(II)ポルフィリン錯体の周辺部に2,2’-ビピリジンが結合した錯体を合成し、高速レーザー分光などを駆使して光誘起反応のダイナミックスを調べた結果、銅イオンを共存させた場合にポルフィリンから銅(II)-2,2’-ビピリジンユニットへの効率的な分子内電子移動が起こること、および、生成した分子内電荷分離状態が逆電子移動により基底状態に戻ることを見出した。本反応が光誘起電子移動反応ないしは通常の電子移動反応であることから、電荷分離状態の生成や逆電子移動反応の速度が反応中心の酸化還元特性により支配されていることや空間的距離を反映した分子構造に大きく依存していることが示唆された。 このように、当初の目的であるポルフィリン錯体の周辺部に銅(II)-2,2’-ビピリジン錯体を結合した金属ポルフィリン複合系を構築し、その光誘起電子移動反応の観測に成功したことは評価できるものと考えている。フェロセンなどの結合した分子系においては光誘起電子移動反応を観測することができなかったが、成分錯体の電子移動特性からこの原因を考察することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度以降は、平成24年度において達成した光誘起電荷分離状態の生成効率や逆電子移動速度の評価に基づいて、構造活性相関の観点から研究を行う。まず、亜鉛(II)ポルフィリン錯体の周辺部に2,2’-ビピリジンが結合した錯体に関して、電荷移動中心間の空間的距離を変化させた分子系を構築し、その光誘起反応の特性を調べて、反応性と分子構造の相関に関する知見を得る。また、ポルフィリン錯体と電子受容性および電子供与性錯体を結合した複合系を合成し、それらの複合系の光化学的挙動と酸化還元特性を調べ、光誘起電子移動過程のダイナミックスを明らかにする。電子受容性および電子供与性ユニットとしては、フェロセンやコバルト、ルテニウムなどの金属錯体を用いる。また、二成分系を拡張して、ポルフィリン錯体に電子供与性および電子受容性錯体を結合させた三成分系を構築する。この化合物では光誘起電子移動反応により、末端の金属錯体に正電荷と負電荷が局在化した長寿命の電荷分離状態が達成できるものと期待される。その反応性を調べ、電荷分離状態の生成効率と寿命などの評価を行う。このような反応系の電子移動反応は光合成で達成されている電子移動と基本的に同一であり、本系ではタンパク質や生体膜のような特殊な化学環境を用いることなく人工的に光合成を模倣し、光エネルギーの変換を行おうとするものである。 研究体制については、平成24年度に引き続いて、錯体の合成は稲毛が行い、電子状態と反応性の評価は稲毛と高木が協力して行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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Research Products
(10 results)