2012 Fiscal Year Research-status Report
金属間相互作用の系統的理解を目指した混合金属錯体の研究
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24550081
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
馬越 啓介 長崎大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (20213481)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 白金 / 11族元素 / 混合金属錯体 / 発光 / 光物性 / 金属間相互作用 |
Research Abstract |
我々は,白金と11族金属イオンおよび様々な置換基を有するピラゾラト配位子からなる混合金属錯体[Pt2M4(R2pz)8](M = Ag, Au, Cu; R2pz = 置換ピラゾラト配位子)を開発してきたが,これらの錯体は,有機ELに応用するには吸収が深すぎるという問題点があった。それを克服するためにジイミン配位子を導入する必要があった。本研究では,混合金属錯体の発光強度に与える貨幣金属イオンの効果に関する一般性の有無を明らかにすることを目的として,ビピリジンおよびその誘導体がキレート配位した白金ユニットを含むZ型混合金属錯体 [Pt2M2(L)2(μ-3-tBupz)4](PF6)2 (L = bpy, 5,5’-dmbpy, 4,4’-dmbpy; M = Ag, Au, Cu)を系統的に合成し,発光特性を詳細に調べた。その結果,これらの錯体には,固体状態で青色~黄緑色の発光を示す結晶相とオレンジ色発光を示す結晶相が存在し,再結晶溶媒の選択によりいずれか一方の結晶相を取り出すことが可能であることが分かった。両結晶相の錯体のCDCl3(CD3CN)中の1H NMRが一致することにより,これらの錯体では結晶構造のみが異なっている2種の結晶が得られているものと考えられる。また,配位子の違いによらず,いずれの場合も青色(L = bpy, 4,4'-dmbpy)または黄緑色(L = 5,5'-dmbpy)に発光する結晶相が主に得られた。黄緑色もしくは青色の発光スペクトルは,振動構造を示すこと,中心金属イオン(Ag, Au, Cu)の違いによらずスペクトルが一致したことから3LCの寄与の大きい励起状態からの発光の可能性が高い。一方,オレンジ色に発光する結晶相の発光スペクトルはブロードであることから,3MLCTまたは3MMLCTからの発光であると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は,多様な幾何構造を有する白金―貨幣金属錯体の合成と発光特性の解明に主眼を置いた研究を行う計画であった。研究実績の概要に記載した通り,様々なジイミン配位子がキレート配位した白金ユニットを用いて,Z型混合金属錯体を系統的に合成し,ジイミン配位子とAg(I), Au(I), Cu(I)のすべての組み合わせにおいて,2種類の結晶相が存在し,両結晶相で最低励起状態が異なることを明らかにできたことは,評価に値すると考えている。また,スペースの関係で研究実績の概要に記載できなかったが,ジフェニルピラゾラトを架橋配位子に用いた混合金属錯体では,室温では発光が観測されないにも関わらず,液体窒素温度では強い発光が観測される錯体や,室温では振動構造が明瞭でない発光スペクトルが低温では明瞭に観測される錯体なども得られており,備品として蛍光光度計用液体窒素冷却ユニットを導入したことによる成果も着実に得られている。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画通り,次年度はMLCTやLLCT励起状態に主に寄与する「ジイミン配位子がキレート配位した白金ユニット」や「フェニルピリジンがシクロメタル化した白金ユニット」にビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセンや,o-フェニレンジアミン,ジチオカルバミン酸イオン,ベンゼンチオラとなどの酸化還元活性配位子を導入し,これらの配位子の酸化還元に伴う錯体全体の電荷の影響や,酸化還元活性配位子と白金(ジイミン)ユニット等との間の電子移動の有無が発光に与える影響について調べる予定である。さらに,フェニルピリジンがシクロメタル化した白金ユニットに関しては,ホスフィン系配位子を作用させることにより強発光性白金錯体が得られることが分かったので,企業等の協力を得ながら,有機EL素子への応用を模索する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は,高額な備品を購入する計画はない。物品費は,合成試薬類とガラス器具類の購入に当てる。旅費は,申請者および大学院生の成果発表のために使用する予定である。その他は,論文の印刷費に使用する予定である。
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[Journal Article] Syntheses and Luminescent Properties of 3,5-Diphenylpyrazolato-Bridged Heteropolynuclear Platinum Complexes. The Influence of Chloride Ligands on the Emission Energy Revealed by the Systematic Replacement of Chloride Ligands by 3,5-Dimethylpyrazolate2012
Author(s)
S. Akatsu, Y. Kanematsu, T. Kurihara, S. Sueyoshi, Y. Arikawa, M. Onishi, S. Ishizaka, N. Kitamura, Y. Nakao, S. Sakaki, K. Umakoshi
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Journal Title
Inorganic Chemistry
Volume: 51
Pages: 7977-7992
DOI
Peer Reviewed
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