2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24550084
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
石井 洋一 中央大学, 理工学部, 教授 (40193263)
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Keywords | シアナミド錯体 / 白金 / パラジウム / 混合金属錯体 |
Research Abstract |
シアナミド架橋多核錯体の開発について、昨年度白金2核錯体への異種金属取り込みに成功したことから、新たにパラジウムをベースとしたシアナミド錯体について検討した。その結果、[PdCl2(diphosphine)]とK2NCNをNaBPh4とともにメタノール中で反応させることにより、N,N,N'-架橋の3核錯体[{Pd(diphosphine)}3(NCN)2](BPh4)2が高収率で生成することを見出した。白金-二座ホスフィン系ではシアナミド架橋を導入すると2核錯体が生成するが、興味深いことにパラジウム-二座ホスフィン系では2核錯体の生成は認められない。ジホスフィンとしてdppe, dppp, dppbの錯体が単離可能であり、またdpppの場合には結晶構造を確認した。一方、NaBArF4存在下で[PdCl2(dppe)]をK2NCNとメタノール中で反応させ、エタノール-ヘキサンから再結晶すると、新規な構造の5核錯体[Pd{Pd(dppe)}4(NCN)4][BArF4]2が中程度の収率で得られた。本5核錯体中のパラジウムはすべて同一平面上にあり、中心のパラジウム原子は4つのNCN配位子に、またその他のパラジウム原子はdppeと2つのNCN配位子に結合した構造である。NCN配位子の配位様式はN,N,N',N'-架橋で、全体として類例のない構造となっている。 また、白金二核錯体[{Pt(dppe)}2(NCN)2]の反応についても前年度から引き続き検討し、モリブデン錯体[Mo(CO)5(thf)]との反応では[Mo(CO)5]フラグメントがシアナミド配位子の末端窒素へ2つ配位した錯体を得た。反応の当量を変えても2つ配位した錯体のみが優先的に得られることから、第一の配位により第二の反応性が高まるような制御が働いているものと見られる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、アミド・イミド配位子の中でも特異な位置を占めるシアナミドに着目し、ソフトで立体的に小さく多様な架橋様式での配位が期待できる点を活用して、新規な構造を持ったシアナミド多核錯体を開発すること、ならびにシアナミド多核錯体を高次構造化した分子ワイヤなどを開発することを目指している。平成25年度には、パラジウム-ホスフィン系に着目して、3核および5核のパラジウム錯体を新規に合成した。この結果は、2核錯体が容易に生成する白金-ホスフィン系と対照的であるだけでなく、従来類例のない5核構造が得られたことで、シアナミド架橋多核錯体の構造的多様性を示せたと考える。また、白金2核錯体への異種金属の集積化・高次構造化について平成24年度から検討してきた結果、集積させる異種金属の種類により、シアナミド架橋の配位構造がシアノイミド型あるいはカルボジイミド型の間で変化しうることも見出した。このような構造変化が従来明確に示されたことはなく、錯体化学・有機金属化学の基礎的知見として重要であると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度にはルテニウム、白金、平成25年度にはパラジウムのシアナミド架橋多核錯体について進展させることができた。平成26年度は、まずこれらの化合物をさらに高次構造化させる手法について検討する。連結の手法として、遷移金属の配位不飽和錯体を活用した方法も取り入れたい。それにより、高次構造を持ったシアナミド―金属分子ワイヤまで展開させる。 また、平成24・25年度に合成した新規錯体の物性の検討および理論化学的検討を行い、なぜそのような構造が安定化されるのか、また酸化還元特性がどのように現れるのかを中心に、シアナミド架橋錯体の構造化学的な本質に迫る。たとえば、(1)シアナミド架橋がシアノイミド型構造になるか、カルボジイミド型構造になるかの制御はどのようになされるのか、(2)白金が2核錯体で安定なのに対してパラジウムが3核や5核構造になるのはなぜか、(3)5核錯体の酸化還元挙動はどのようなものか、さらには、(4)5核錯体が2核や3核の錯体の高次構造化によって生成しているとすれば、どのような反応機構が考えられるか、などが具体的検討課題となる。あわせて、従来検討の及んでいなかった7属金属のシアナミド架橋錯体についても、多核構造の構築手法を調べることとする。
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