2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
24550084
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
石井 洋一 中央大学, 理工学部, 教授 (40193263)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | シアナミド錯体 / パラジウム / 白金 / 四核クラスター |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度の研究で、パラジウムベースのシアナミド多核錯体において3核および5核の新規構造の錯体が生成することを見出した。どのようにこの多核構造の拡大が起こるのかは、多核錯体の連結・高次構造化のモデルとして興味深い課題である。そこで、パラジウムの系における反応の進行過程を詳細に検討した。まず、メタノール溶媒中、[PdCl2(dppe)]とK2NCN (1 equiv)を 20℃で数分間反応させた後NaBPh4で処理し、再結晶したところ、ジカチオン性のパラジウム四核クラスター[{PdCl(dppe)}2{Pd(dppe)}2(NCN)2][BPh4]2 (1)が橙色結晶として得られた(42%収率)。1はIR で2012 cm-1にカルボジイミド型NCN配位子に帰属される吸収を示す。またX線結晶構造解析により、白金錯体で確認されている二核コア[Pd(NCN)(dppe)]2のシアナミド架橋の両末端に[PdCl(dppe)]+フラグメントが配位した構造を持つことが確認された。興味深いことに、錯体1の結晶を室温で塩化メチレン中に懸濁すると、昨年度合成した三核クラスター[{Pd(dppe)}3(NCN)2][BPh4]2 (2)および[PdCl2(dppe)]が生成することが観測された。このことは、1は2の生成中間体であることを示唆するものである。さらに、2の生成反応の反応時間を延長すると、五核クラスター[Pd{Pd(dppe)}4(NCN)4][BArF4]2 (3)が生成すること(17%収率)も確認した。以上のことから、白金では2核錯体で反応が停止するのに対して、パラジウムでは2核(観測されない)、4核、3核、5核の順で構造の連結・高次化が進行していることがわかった。クラスター高次化の追跡ができた稀な例として興味深い。
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