2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24550088
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
崔 亨波 独立行政法人理化学研究所, 加藤分子物性研究室, 基幹研究所研究員 (10425415)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ポーラス金属錯体 / 誘電性 / 磁性金属錯体 / 有極性分子 |
Research Abstract |
今年度は計画とおり金属イオンCo2+と配位子1,4-benzenedicarboxylateからなる磁性ポーラス金属錯体の単結晶作製を行った。それ以外に新規二層のシート状水分子が有機分子(Cucurbit[6]uril)によって分離された新しい結晶作製を行った。また、新規強誘電性と伝導性を合わせ持つ新規誘電体を作製するため、伝導性担う物質を「ナノ空間」に投入可能な小さい伝導性金属錯体分子[Ni(ddt)2](ddt=1,4-dithiin-2,3-dithiolate)結晶作製を行い電気的性質を調べた結果高圧下で金属になることを発見した。 1、大きい「ナノ空間」を持つ金属イオンCo2+と配位子1,4-benzenedicarboxylateからなる二次元的構造を持つ結晶作製に成功した。しかし、結晶が小さいため完全な結晶構造は得られていないが、磁性の測定では反強磁転移を示すことを発見した。 2、ナノシートの空間を有する新しい分子性結晶に有極性分子としは、水の層入っている単結晶作製を行い、結晶構造解析および誘電特性測定を行った。その結果、室温付近で大きな誘電異常が観測された。室温付近で水分子の振動が大きく、低温結晶構造解析を通じて水の位置を決める必要があることが判明した。 3、新規強誘電性を持つ分子素子などに応用可能な物質を作製するため、ポーラス金属錯体の「ナノ空間」に入ることが可能な小さい金属錯体分子[Ni(ddt)2]の伝導特性を調べた。この物質は中性であるため、ポーラス金属錯体に入ることが可能であり、ポーラスの特性には影響しないと考えられる。また、この物質の結晶は常圧で半導体であるが、圧力をかけると新しい金属状態になることを発見した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1、計画したポーラス誘電物質の候補としていた、反強磁性転移を示す大きい「ナノ空間」を有する新規磁性金属錯体を作製に成功し、磁気的性質を調べた。結晶が小さいため、通常の構造解析装置では完全な構造解析に必要なデータは取れなかったが今後共同利用装置にある強力なX線装置(Varimax)を使用して詳細な構造を決定する予定である。 2、パルクの水と比べ、室温付近で大きな誘電率を持つ二次元シート状の水が有機分子により隔離された新規誘電体結晶を作製できた。現在、結晶中水分子の位置の特定および誘電特性と結晶方向性との相関について解明を行っている。 3、新規誘電体へ応用を目的として、電気を流すことができる小さい金属錯体[Ni(ddt)2]を合成し、常圧と高圧下での電気的性質を調べた。この分子は小さいため、ポーラス金属錯体の空間に挿入することが可能であり、強誘電性方向と垂直の方向に電気を流すことが実現できれば、新しい分子材料の発見に繋がると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
1、作製した新規磁性ポーラス金属錯体の結晶構造および誘電特性を詳しく調べる。また、「ナノ空間」の中の溶媒分子を他の極性分子、水、エタノール、メタノールなどの置換し、誘電特性を調べる。また、長さが異なる配位子 (4, 4’-biphenyldiacarboxylate)とCo2+とポーラス金属錯体を作製し、空孔直径の拡張を試みる。結晶作製に成功すれば、構造決定、誘電特性、磁性の測定を行う。また、「ナノ空間」に小さい金属錯体伝導性分子の挿入を試みる。 2、二次元シート状の水分子を含む(Cucurbit[6]uril)の分子性結晶の詳細な結晶構造の決定と各方向の誘電特性を詳しく調べる。現在測定した一方向の誘電特性測定では室温付近で大きな誘電異常を示しており、バルクの水とは大きく異なる事が分かった。今後は定性的な誘電率測定、誘電異常が起こる温度付近での結晶構造解析、高電場下での誘電特性を調べる予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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