2014 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24550088
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
崔 亨波 独立行政法人理化学研究所, 加藤分子物性研究室, 研究員 (10425415)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 誘電体 / ポーラス金属錯体 / 有極性分子 / 強誘電体 / 磁性金属錯体 |
Outline of Annual Research Achievements |
1)目標物質である二次元シート構造を持ち、シートの間に大きなナノ空間を有するポーラス金属錯体 Co3[C6H4(COO)2]2(C6H4C2O4H)(DEF)4(H2O)2結晶の磁化率測定行った結果、約25Kで反強磁性転移を示す事が判明した。結晶の中で、三つのCoイオンが配位子末端の酸素を介して直線上に並びことにより磁性核を形成し、そのうち、中心のCoイオンは八面体配位を取り、両側の二つは四面体配位を取るという興味深い構造を形成している。磁性核の中に三つの磁性イオンを並ぶことにより、核の中で二つの磁性イオンは反強磁性相互作用によりスピンが消失しても、残りの磁性イオンのスピンは生き残り、三次元的な相互作用が可能となっている。 2)ナノ空間に投入可能であり、溶解性の良い分子であるぺンタセン単結晶の圧力下電気的性質を調べた結果、約15GPaで金属になることを発見し、今後伝導性を持つポーラス誘電物質の開発の可能性について検討した。ぺンタセン分子は5つのベンゼン環が横に並ぶ、炭素と水素だけで構成された有機分子である。この分子は常圧では半導体であるが、約10 GPaから電気抵抗の測定が可能となり、圧力を印加するとともに活性化エネルギーが急激に小さくなり、15 GPaでは室温付近で金属領域が現れる。この分子は溶解性が良いので、金属錯体合成時に分子溶液を同時に反応セルに入れることにより、ポーラス錯体のナノ空間に分子を導入することが可能である。そのため、今後機能性ポーラス金属錯体に誘電性と伝導性を併せ持つ物質の開発が可能になると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
1)昨年度発見した、新規ポーラス強誘電体である[Cu3La2(imnoacetate)3](H2O)8の低温構造測定を行った結果、誘電率測定結果をよく説明できるようになったが、構造の精度が悪く、測定を繰り返し行う必要がある。 2)Co3[C6H4(COO)2]2(C6H4C2O4H)(DEF)4(H2O)2は反強磁性物質であることを発見したものの、結晶が小さく、結晶構造と誘電率測定の精度が規定に満たないので測定し直す必要がある。 3)小さい有機分子からなる単結晶の伝導性を測定する事により、今後ポーラス誘電物質に新しい機能性として伝導性付与が可能であることが証明できた。
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Strategy for Future Research Activity |
1)[Cu3La2(imnoacetate)3](H2O)8の低温構造の再測定を行い、構造を決定して発表する予定である。 2)Co3[C6H4(COO)2]2(C6H4C2O4H)(DEF)4(H2O)2の構造と誘電特性を再測定し、有極性分子との置換等を行い、誘電率測定を行う。 3) Coイオンと4,4'-biphenyldicaboxylateとのポーラス金属錯体合成を行う。
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Causes of Carryover |
26年度に、得られた結晶の磁気測定と詳細な構造解析を行い発表する予定であったが、結晶の大きさが小さく、得られたデータの精度が規定に満たなかったため、計画を変更し小さい結晶の構造解析に適した装置で構造解析を行うこととしたため、未使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
詳細な構造解析とシンポジウムおよび論文発表を次年度に行うこととし、未使用額はその経費に当てる事としたい。
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