2012 Fiscal Year Research-status Report
生体酸化ストレスマーカーの多チャンネル測定システムの開発
Project/Area Number |
24550106
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Research Institution | Tokyo University of Pharmacy and Life Science |
Principal Investigator |
楠 文代 東京薬科大学, 薬学部, 教授 (70057371)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 酸化ストレス / 電気分析化学 / バイオマーカー / 動脈硬化 / 糖尿病 |
Research Abstract |
酸化ストレスは、正常老化や動脈硬化性疾患及び多くの変性疾患を促進することが知られている。本研究の目的は、酸化ストレスに起因する疾患の解明や予防に有用なツールとして、酸化ストレスのタイプに対応した物質群を一斉にモニタリングできる分析装置を開発し、このシステムを用いて酸化ストレスを総合評価した動脈硬化性疾患等の解析を行うことである。 本年度は、酸化還元物質の解析および計測に適した電気化学検出手法を導入し、酸化ストレスマーカーの多チャンネル測定システムの開発を実施した。当初の計画通り、多チャンネル測定システムのひとつとして、3チャンネル電気化学検出HPLCシステムの開発を行った。本システムは、ポンプ3基、カラムスイッチングバルブ2基、プレカラム2本、分析カラム2本、電気化学検出器3基を用いた3流路のチャンネルとし、酸化還元物質を各チャンネルで直接電解酸化あるいは直接電解還元で検出できる装置構成とした。本システムを中医薬『丹参』中に含まれる10種類の酸化還元物質(フェノール酸類およびタンシノン類)の一斉分析へ適応したところ、約70分以内に各酸化還元物質を各チャンネルでモニタリングでき、従来の分析方法に比べて感度と精度に優れることを示すとともに分析時間の短縮も図ることができた。酸化ストレスマーカーの疎水性や酸化還元能は多様である。従って、疎水性ならびに酸化還元能が顕著に異なるフェノール酸類およびタンシノン類の一斉分析に適用できた本システムは、生体酸化ストレスマーカーの多チャンネル測定システムとして有用である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は、当初計画していた酸化ストレスマーカーの多チャンネル測定システムのひとつとして、3チャンネル電気化学検出HPLCシステムの開発に成功した。本システムの有用性を示す応用研究として、多種類の酸化還元物質(フェノール酸類、タンシノン類)を含む中医薬『丹参』を試料として扱った。本システムが、測定対象の水溶性物質と脂溶性物質をオンラインで分離し、各チャンネルで一斉分析可能であることを明らかにした。さらに、従来の分析法に比べて多くの利点があることを示し、信頼性に優れる測定システムとして確立できた。 このシステムは、本研究成功のキーとなる装置である。
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Strategy for Future Research Activity |
1.多チャンネル測定システムによる生体試料中の酸化ストレスマーカーの定量 平成24年度に開発した多チャンネル測定システムを用いて、酸化ストレスマーカーである8-ヒドロキシデオキシグアノシン、ヘキサノイルリジン、8-イソプラスタン、グルタチオン、グルコース、アスコルビン酸、尿酸、ビリルビン、ポリフェノール、トコフェロール、コレステロール、酸化ステロールなどの定量法を確立する。いずれも、血漿・尿・唾液などの生体試料分析においてμLオーダーの試料量で精度良く定量できる方法に開発・改良する。さらに、前処理方法の自動化を図り、簡便な生体試料分析法として確立する。 2.健常及び動脈硬化疾患モデルラットにおける酸化ストレスマーカーの動態分析 ラットの尾静脈から得た数十μLの血漿を試料とし、上述の酸化ストレスマーカーの動態分析を行う。健常ラットと動脈硬化疾患モデルラットにおける酸化ストレスマーカーの時間‐濃度プロファイルより、動脈硬化疾患の進展に影響を及ぼす酸化ストレスマーカーの順位付けを行う。さらに、糖脂質代謝調節に関与する生体成分の動態分析と対比した結果を基に、酸化ストレスマーカーと動脈硬化疾患の進展との相関性に関して総合評価を行う。 平成25年度の直接経費は、主に試薬・溶媒類、分析カラムなどの消耗品、実験動物の購入に利用する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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