2013 Fiscal Year Research-status Report
標的タンパク質との複合体におけるリガンド分子結合部位の高精度特異的検出法の開発
Project/Area Number |
24550108
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Research Institution | Meisei University |
Principal Investigator |
田代 充 明星大学, 理工学部, 教授 (40315750)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉村 悦郎 東京大学, 農学生命科学研究科, 教授 (10130303)
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Keywords | 標的タンパク質 / リガンド / 分子間相互作用 / 核磁気共鳴法 / 結合部位 |
Research Abstract |
ここ数年、核磁気共鳴(NMR)法の薬剤スクリーニングへの応用が試みられており、新規なスクリーニング法として注目されている。NMR用の試料溶液としては100% D2Oが測定しやすいが、溶媒置換の操作が不可避となり、貴重な試料を損失することもある。本研究では、軽水溶液(95% H2O+5% D2O)として測定可能であり、ターゲットであるレセプター分子との結合に寄与するリガンドの部位を、精確に特定できる高感度なNMR測定法の開発を目的とする。具体的には、ここ数年主流となっているSaturation Transfer Difference (STD)法およびWater-LOGSY法をベースに、高感度化・高精度化の開発を行う。高価な安定同位体を使用せずに1次元スペクトルにより、リガンド分子中のどの部位が標的レセプター分子との結合に関与するかの情報を得ることを目的とした。 (1) ≪Water-LOGSYおよびSTD法での水シグナルの消去方法の確立≫ 水シグナル近傍のリガンドシグナルを検出するため、巨大な水シグナルを効率的に消去するパルステクニックを開発し、実際のパルスシーケンスに取り入れた。現在、WATERGATE W5シーケンスおよびZ-filterを用いて、良好な結果が得られており、H25年度は他の複合体として、オリゴ糖-加水分解酵素【インベルターゼ】への応用を試み、加水分解過程の観測も行った。 (2)(b) ≪STD法での選択励起シーケンスおよび磁化移動方法の検討≫ 平成24-25年度で検討した効率的な水シグナルの消去テクニックをSTD法に取り入れ、次にタンパク質の選択励起法を検討した。タンパク質の照射位置とリガンドシグナルの感度の関連性に関しては報告例がないため、系統的な研究を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「研究実績の概要」(2)において記載した、タンパク質の照射位置とリガンドシグナルの感度の関連性に関しては、当初の研究計画には含まれていなかった項目である。これまでのSTD法の報告例では、タンパク質の照射位置はほとんど0-1 ppm付近のメチル基領域である。これは、リガンド分子中に0-1 ppm付近のシグナルがないことを前提にしている。本研究課題の遂行において、モデル複合体として、ヒト血清アルブミン-イブプロフェンを使用した際、イブプロフェンのメチル基が1.5 ppm付近に観測されることより、ヒト血清アルブミンの選択照射位置を0.0, 4.8, 5.5, 9.0 ppmなど複数個所で測定を行った。この測定結果では、イブプロフェンのシグナルの相対強度が照射位置により、異なることが明らかになった。この原因を解析するために、他のリガンドでも同様の測定を試す必要があった。予想される原因として、次の2つが考えられる。 (1)照射位置とシグナルの相対強度の関連――照射位置に近いリガンドシグナルの相対強度が高くなる。 (2)標的レセプター(ヒト血清アルブミン)との結合部位に近いリガンドシグナルの相対強度が高くなる。 上記の2点に関しては、現在検討中である。この検討項目は、当初の実験計画にはなかったため、若干の研究遂行の遅れにはなったものの、全体としては概ね研究計画に沿っている。
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Strategy for Future Research Activity |
本法の汎用性を活かし、説得力のあるデータを示すには、多くの複合体で有効性を明確に示す必要がある。この点において、数種類の複合体の検索および調製に時間がかかる可能性がある。以下に示す2種類の複合体について、今年度の研究を推進する。 (1) ヒト血清アルブミン-イブプロフェン複合体: 現在解析中であるヒト血清アルブミン-イブプロフェン複合体では、X線結晶解析により得られた立体構造が利用できるため、相互作用部位の原子レベルでの解析に役立つものと考えられる。「標的レセプター(ヒト血清アルブミン)との結合部位に近いリガンドシグナルの相対強度が高くなる」という明確なデータが得られれば、ドラッグデザインにおいても有効な情報となる。 (2)N-アセチルスクロサミン-インベルターゼ複合体: スクロースはインベルターゼにより加水分解されるものの、その誘導体であるN-アセチルスクロサミンは加水分解されない。インベルターゼとの相互作用におけるアセチル基の関与を、Water-LOGSYおよびSTD法により解析する。実際のサンプルでは、インベルターゼの濃度を3 μM程度にしか調製できないため、検出感度が低いことが懸念される。感度向上に関しても、測定法の検討を行う。 これまでの報告例では、リガンド分子全体の1Hが検出されることがほとんどであった。本研究では、結合に関与する1Hを選択的に検出することが目的である。その情報が原子レベルでの分子間相互作用の解析に大きく役立つだけでなく、ドラッグデザインにも応用できる有報なものとなる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
人件費・謝金に関して、平成24年度:700,000円、平成25年度:500,000円を計上していたが、研究補助が可能な適任者が見当たらなかったため、次年度使用額が発生した。 本研究課題の遂行に必要な分析機器である核磁気共鳴装置の維持には、液体ヘリウムが不可欠である。これは超伝導状態を保つためであるが、液体ヘリウムの価格が国際的に高騰しているため、液体ヘリウム購入に充てることを計画している。また、平成26年度の物品費は、平成25年度の48%の計画であるが、レセプターである高額なタンパク質を数種類、購入する予定であり、物品費に充てる予定である。
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Research Products
(9 results)
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[Journal Article] Dopamine cannot promote oligomerization of unoxidized α-synuclein2013
Author(s)
Sakurako Shimotakahara, Mika Matsui, Chiseko Sakuma, Teruaki Takahashi, Takashi Fujimoto, Kazuo Furihata, Masaki Kojima, Shohei Seino, Tomoya Machinami, Yoichi Shibusawa, Kenji Uéda and Mitsuru Tashiro
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Journal Title
J. Biophy. Chem.
Volume: 4
Pages: 110-114
DOI
Peer Reviewed
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