2013 Fiscal Year Research-status Report
生体高分子の分子構造解析のための溶液X線散乱クロマトグラフィー法の評価・開発研究
Project/Area Number |
24550111
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
渡邊 康 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 食品総合研究所食品バイオテクノロジー研究領域, 上席研究員 (30353957)
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Keywords | 生体高分子 / クロマトグラフィー / 溶液構造物性評価 |
Research Abstract |
溶媒や処理条件に依存した生体高分子の多様な構造体を、分離と同時に構造評価する手法の開発が望まれている。本研究では、生体高分子をクロマトグラフィーで分離しオンライン接続した溶液X線散乱測定装置により、溶出分子のサイズ、分子量および分子構造を同時計測する溶液X線散乱クロマトグラフィー法について、生体高分子の分離直後の分子構造解析における新たな有効性の検証に焦点を絞り、食品加工や食品開発など生体高分子関連製造現場への普及展開を見据えた基盤研究を行う。 本年度は、食品に係る生体高分子の機能や加工特性の制御などの有効利用に役立てるため、結晶化やNMR構造解析が困難な食品関連タンパク質の溶液中の変性特性を散乱法により明らかにした。具体的には、分子量数万のアレルゲン性タンパク質であるウシ血清アルブミンの熱処理条件で混在するモノマーと可溶性高分子量会合体のクロマトグラフィー分離条件における溶液X線散乱クロマトグラフィー法による可溶性会合体の分子構造変化を明らかにする実験によりウシ血清アルブミンの熱変性可溶性分子の溶液X線散乱データを評価し、生理的条件での天然状態単量体とは異なる散乱曲線を示すことを明らかにした。本結果は、食品タンパク質の熱処理加工時のゲル化の初期過程の解析と関連するので、今後のこの分野での散乱手法の有効利用が期待できる。 また、大腸菌外膜に低分子の通過孔を形成する内在性生体膜タンパク質OmpFについて、界面活性剤ドデシル硫酸ナトリウムによる可溶化条件下で、分子サイズが約4nmの天然3量体と変性単量体について溶液X線散乱実験データを評価中である。さらに、本手法において未開拓のイオン交換クロマトグラフィーモードについての評価研究の準備を開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度の研究実施計画の内容に概ね則した研究実験を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に開始したイオン交換クロマトグラフィーモードについて評価研究を継続する。具体的には、試料は水溶性タンパク質である卵白リゾチームを対象とし同手法を適用し、イオン交換クロマトグラフィーの溶出分子のサイズ、分子量および分子構造を同時計測することが可能かを検証する。さらに、オートサンプラーの本測定システムへの組み込みを計画し、未開拓であった連続測定システムの構築の可能性を精査する。これらの成果により、放射光溶液X線散乱測定の未経験者においても、本手法の利用が容易となり、他分野への技術普及が十分に期待できる。以上の実験から、溶液X線散乱クロマトグラフィー法について、分離直後の分子構造解析についての本手法の新規な有効性の評価・実証を行い、本手法の他分野への技術普及に資する知見を整理する。
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