2014 Fiscal Year Research-status Report
不斉閉環メタセシスを基盤とする面不斉、軸不斉、らせん不斉の精密制御
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24550121
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
神川 憲 大阪府立大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (40316021)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 面不斉 / 軸不斉 / らせん不斉 / 不斉閉環メタセシス / クロム錯体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は不斉閉環メタセシスを基盤として、面不斉、軸不斉、およびらせん不斉の効率的な構築法を開発することにある。特に、面不斉アレーンクロム錯体や軸不斉を有するインドール類の触媒的不斉合成を中心に成果をあげることができた。本研究の背景として、既に我々は不斉閉環メタセシスを活用した速度論的分割によって、面不斉アレーンクロム錯体を光学活性体として合成することにしていた。しかしながら、上記の反応では、分割であるため、収率50%を超えることはできない。また、生成物と回収原料を分離しなければならず、時として精製が困難となる場合があった。そこで、本研究では、不斉非対称化操作による面不斉クロム錯体の合成に取り組んだ。1-ハロ-2,6-ジアルケニルクロム錯体はメソ体であり、面不斉は存在しないが、そのどちらか一方のアルケニル基を区別して不斉閉環メタセシス反応を行うことにより、面不斉クロム錯体を光学活性体として合成できる。実際に様々な基質および不斉配位子を検討し、完全な立体選択性(>99%ee)および、反応性(99% yeild)で環化体の面不斉について光学活性なクロム錯体を合成することに成功した。さらに、芳香環の1位にハロゲンの代りにインドール誘導体を導入すると、今度は不斉非対称化操作により、軸不斉を有するN-アリールインドール類を合成できる可能性があった。そこで、実際に不斉閉環メタセシス反応による非対称化操作を行ったところ、完全な立体選択性(>99%ee)および、反応性(99% yeild)で面不斉と軸不斉をあわせもつインドール誘導体クロム錯体を合成することに成功した。さらに、クロムカルボニル基を空気酸化により除去することによって、軸不斉を保持したまま、光学活性なN-アリールインドール類を触媒的不斉合成によって合成することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
我々が想定していた以上に、完全な立体選択性、反応性で目的とする面不斉クロム錯体や軸不斉N-アリールインドール類を合成する事に成功した。これは面不斉クロム錯体の触媒的不斉合成としては、過去最高の結果である。また、Nーアリールインドール類の軸不斉のみならず、ビアリールの軸不斉についてもこの方法論が適用可能であることを見いだしている。らせん不斉を有するヘリセン類の合成においては、触媒的不斉合成には至らなかったものの、新たな手法の開発に成功し、現在不斉合成へ展開するべく検討を行っている最中である。このように、当初の予定と比して、順調に成果を積み上げることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、得られた光学活性なアレーンクロム錯体をより付加価値の高いもの変換することを目的として、研究を進めていきたい。1つの可能性としては、面不斉、あるいは軸不斉をもつ不斉配位子の開発が挙げられる。これと関連して、これまでに行ってきた不斉閉環メタセシスを活用した速度論的分割によって合成した面不斉アレーンクロム錯体は、ロジウム触媒不斉1,4-付加反応の配位子として、大いに有効であることが分かっており、さらなる改良を行うことでより基質適用範囲の広い配位子の合成を引き続き行うことも視野にいれながら、統括的に研究を推進していくことを予定している。
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Causes of Carryover |
2014年度に面不斉(アレーン)クロム錯体を基盤とした不斉配位子の開発について、さらなる論文発表を予定していたが、上記よりも高活性な触媒系を開発することに成功したため、当初の予定を変更して、新しい触媒系の詳細に関する解析および合成研究を行うこととしたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本実験を担当する大学院生のリサーチアシスタントとしての雇用経費に充てることを予定している。
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Research Products
(14 results)