2013 Fiscal Year Research-status Report
遷移金属触媒による脂肪族アルコールへの直截的官能基導入法の開発
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24550122
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
福山 高英 大阪府立大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (60332962)
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Keywords | アルコール / 水素移動型反応 / α位アルキル化 / ニトリル / ルテニウムヒドリド / アセトアミド / 窒素系配位子 |
Research Abstract |
アルコール類は入手容易な炭素原料であり、有機合成において重要な出発基質である。本研究では、遷移金属触媒によるアルコールのアルデヒドへの水素移動型反応を活用した炭素-炭素結合形成反応の開発を行なった。アセトアミドとアルコール類との反応を検討したところ、RuHCl(CO)(PPh3)3触媒存在下、塩基としてカリウムtert-ブトキシドを用いた場合にアセトアミド類のα位アルキルが良好に進行することを明らかとした。種々配位子の検討を行ったところ、本反応では窒素系配位子が有効であることを見いだした。配位子としてビピリジルを用いるとベンジルアルコール類との反応が良好に進行した。一方、非ベンジル型のアルコールとの反応は緩慢であった。しかしながら、窒素系三座配位子であるピラゾリルピリジルピロールを添加することでベンジルアルコール類のみならず非ベンジル型アルコールでも反応が良好に進行することを見いだした。さらに、アルコールを用いたα位アルキル化反応をアセトニトリルに適用したところ、 RuHCl(CO)(PPh3)3触媒を用いて良好に反応が進行することを見いだした。種々用いる塩基の検討を行なったところ、本反応では塩基としてリン酸カリウムの添加が有効であることが明らかとなった。一方、窒素系配位子の添加効果はなく本反応においてはアセトニトリルが配位子として作用していることが示唆された。また、 RuHCl(CO)(PPh3)3が水素移動反応に関与していることも明らかとした。さらに、予備的な実験によりRuHCl(CO)(PPh3)3ベンジルアルコール類と芳香族ボロン酸との反応により、低収率ながらアルコールのα位に芳香族置換基が導入された生成物が得られることを見いだしている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では安価で入手容易な炭素原料であるアルコールを用い、遷移金属触媒によるアルコールのアルデヒドへの水素移動型反応を活用することで新たな炭素-炭素結合形成反応を開発することを目的としている。これまで、RuHCl(CO)(PPh3)3触媒を用い、配位子、塩基を的確に選択することでケトン、アセトアミド、アセトニトリルのα位アルキル化反応の開発に成功した。これらの反応では、水素移動型反応により生成したアルデヒドとカルボニル化合物とのアルドール縮合が鍵過程として含まれる。一方、アルコールのα位への芳香族置換基の導入はこれまでほとんど未発達であるが、RuHCl(CO)(PPh3)3触媒によりベンジルアルコール類と芳香族ボロン酸との反応によりα位への芳香族置換基の導入が可能であるという有望な結果を得ることができた。次年度では、アルコールのβ位およびγ位への官能基導入法の開発に力点を移す計画であるが、本年度に得られた研究の達成度は十分に満足のいくレベルであり、次年度に向けて本研究は順調に推移して行くものと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
アルコールのα位での官能基化に続き、水素移動型反応により生成するアルデヒドの酸性プロトンを活用し、アルコールβ位への官能基化導入法の開拓に重点をおく。各種求電子試薬や有機金属試薬との反応を検討する。また、アルデヒドを配位性官能基として活用し、アルデヒドβ位の炭素-水素結合を活性化することで、アルコールγ位の官能基化する反応の新規触媒系を精査するものとしたい。。さらに異なる官能基を一挙に導入するマルチ官能基化反応の開発に取り組む。ここでは、複数の官能基化を協奏的に行なうドミノ反応、反応を逐次的に行なうワンポット逐次反応の開発に取り組む。
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