2012 Fiscal Year Research-status Report
多官能基性分子の直截的合成法および単一試薬・溶媒による連続反応の開発
Project/Area Number |
24550124
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Osaka Institute of Technology |
Principal Investigator |
小林 正治 大阪工業大学, 工学部, 講師 (30374903)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 天然物 / 全合成 / ワンポット反応 / CPME / ヘリセノン / 直截的分子構築法 / ラジカル反応 |
Research Abstract |
多官能基性構造をもつ生体関連物質の収束的かつ直截的分子構築法の創出を目的として、1.ヤマブシタケ活性成分であるヘリセノン類の全合成、2.Cu(II)/Cu(I)の相互変換を利用した新規ラジカルカスケード反応、3.CPMEを反応溶媒とするワンポット多段階プロセスを検討した。1.に関して、花粉管生長阻害活性が観測されているヘリセリンの全合成に成功し、天然物の報告構造の誤りを訂正した。また、ヘリセノン共通中間体の短段階合成に関して、共役エノンをMichael受容体とする新しいルートを見出し、ヘリセンA~CやヘリセノンAの全合成にも成功した。また、2.に関しては、テロラロンから誘導したエナミドを基質とする環化を検討したが、臭化銅によるエナミドα位のブロモ化が問題となり、連続反応系の開発には至らなかった。3.に関しては、CPMEのラジカル反応への適用性と分解機構を明らかにし、ラジカル付加/パラジウム触媒カップリング反応/有機金属反応のワンポット化とCPMEの回収再利用性を実証した。さらに、有用物質合成への適用例として、プロスタグランジン骨格の合成を検討した。原料合成においてもCPMEの適用性を検証し、反応の制約に関する様々な知見を得た。1,4-還元を含む3工程ワンポット反応までは達成できなかったが、ラジカル付加/カップリング反応からなる2工程ワンポット反応に成功し、プロスタグランジン骨格合成の足掛かりを得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、多官能基性分子の直截合成を視野に入れた、効率的なワンポット多段階反応や単一試薬・溶媒による連続反応の創出を目的としており、最終的に天然物や生物活性分子の全合成に結びつけることを一つの到達目標としている。今までの研究で、臭化銅を用いるワンポット多段階反応で合成したフタリド化合物を共通中間体として、ヘリセリン、ヘリセノンA、ヘリセンA~Cの合成が完了しており、構造活性相関研究に必要なヘリセノン関連化合物の合成ライブラリーが着々と合成されつつある。また、単一溶媒による連続反応に関しては、新規疎水性エーテル系溶剤であるCPMEがラジカル付加、ラジカル環化、ラジカル脱酸素化、ラジカル還元等に利用できることを見出し、これらのラジカル反応を含んだ連続反応系の開発が進行中である。その一例として、ラジカル付加/パラジウムカップリング/有機金属付加のワンポット化が達成されており、多様な生物活性を持つプロスタグランジン誘導体の合成にも応用展開中である。CPMEの再利用性やラジカル付加における分解機構も解明され、産業利用を目指す多くの企業からの関心も集めている。一方、単一試薬による連続反応に関しては、臭化銅によるブロモ化/ラジカル環化のワンポット反応が成功しておらず、今後は別の反応系を検討する必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
直截的な官能基導入反応を利用したヘリセノン関連化合物ライブラリーの構築に関しては、側鎖の5’位にケトン基のない天然物(ヘリセンA~C、ヘリセリン、ヘリセノンJなど)はおおよそ合成が完了しており、今後は官能基の位置や構造を人工的に変えた類縁体の合成を行う予定である。一方、側鎖の5’位にケトン基を持つ天然物(ヘリセノンA~I、エリナセリンA, B、ヘリセノールB~Dなど)の合成に関しては、懸案であった保護基の問題がようやく解決されつつあり、シアノヒドリンのアルキル化とStilleカップリングを鍵として関連天然物の全合成を推進する計画である。エリナセリンAや3-ヒドロキシヘリセノンFなどの多官能基性天然物のより直截的な合成方法論の開発に向けては、従来の化学的な手法だけでなく、酵素反応なども適宜組み込み、今後はキノコそのものを用いた生体触媒反応や生合成を踏まえた直截的構造変換反応を平行して推進する。また、ポリフェノール以外の活性物質として、シス縮環したビシクロエーテル天然物を取りあげ、その実用合成に資する直截的な分子構築法を検討する。今までの研究で、ハロラクトン化-αブロモ化-オキシFavorskii転位を使った立体特異的分子変換法を見出しており、ダイシハーバインやローレネニンなどの生物活性分子の直截合成への応用を検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
年度末の学会出張旅費の清算に関して学内締め切りに間に合わなかったため繰越金が生じた。繰越金は次年度に当学会の旅費として使用する。次年度以降も合成実験を主として研究を展開する予定であり、初年度と同程度の試薬類、溶媒、ガラス器具等を購入する計画である。HPLC用の精製カラムも購入する。また、キノコを用いた生体触媒反応を開始するため、凍結乾燥機を新規に購入する。国内旅費は天然物討論会、有機合成シンポジウム、日本化学会年会での研究成果発表や、研究調査のための出張旅費として使用する。謝金は、論文投稿のための英文校閲費や合成化合物の分析にかかる経費として使用する。その他に、既存の機器のメンテナンスや修理にかかる費用や印刷費等に使用する。
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Research Products
(16 results)