2013 Fiscal Year Research-status Report
多官能基性分子の直截的合成法および単一試薬・溶媒による連続反応の開発
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24550124
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Research Institution | Osaka Institute of Technology |
Principal Investigator |
小林 正治 大阪工業大学, 工学部, 講師 (30374903)
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Keywords | 全合成 / 天然物 / CPME / 機能性成分 / 立体特異的転位反応 / 実用合成 |
Research Abstract |
今年度は,多官能基性分子の収束的かつ直截的合成法の創出ならびに応用展開として、1.ヤマブシタケに含まれる機能性成分の全合成と構造決定、2.立体特異的転位反応を利用した紅藻由来含臭素アセトゲニン類の合成、3.CPMEを反応溶媒とする実用合成プロセスを検討した。1.に関して、ワンポット多官能基化反応で合成したフタリドコアを起点として、ヤマブシタケの機能性成分であるヘリセノン類の合成を検討した。特に、側鎖のゲラニル基に酸素官能基を持つ同族体の合成を進め、ヘリセノンBおよびI、エリナセリンAおよびB、ヘリセノールA~Dの全合成を達成した。ヘリセノンBにはコラーゲン誘発血小板凝集に対する抑制効果があると報告されているが、本研究で天然物の報告構造に誤りがあることを確認し、全合成によって正しい構造を確定した。また、ヘリセノールCおよびDが、ヘリセノールBの分解によって生成することを明らかにし、これらの化合物が精製過程で生じたアーチファクトである可能性を見出した。この他にも、ヘリセノンAからIへの変換やヘリセノンAからエリナセリンBへの変換などにも成功し、一連の天然物が自然界で系統的に合成されていることを実験的に証明した。一方、2.に関しては、最近我々が開発したoxy-Favorskii転位を利用する双環性エーテル化合物の立体制御合成法を、紅藻由来含臭素アセトゲニン類の合成に応用した。検討の結果、ローレネニンやローレニディフィシンなどのビシクロ化合物の骨格構築に、本手法が適用できることを見出した。3.に関しては、CPME単独溶媒による生物活性分子の合成を検討した。プロスタグランジン誘導体を標的として、各合成段階におけるCPMEの適用性を検証した結果、ヨウ素化、Reformatsky反応、水酸基のシリル化反応などにも適用できることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、多官能基性分子の直截合成に資する効率的な分子変換反応(ワンポット多官能基化反応や単一試薬・溶媒による連続反応など)の創出を目的としており、最終的に、見出した反応を天然物や生物活性分子の全合成に応用することを到達目標の一つとしている。はじめに見出した臭化銅によるワンポット多官能基化を起点として、ヘリセノン類、ヘリセノール類、ヘリセン類、エリナセリン類、ヘリセリンなどのヤマブシタケ子実体に含まれる低分子成分を体系的に合成することに成功した。さらに、合成過程において、天然物の構造訂正や同族分子間の変換過程も明らかにした。以上の成果は、合成方法論のみならず、生合成や構造活性相関を議論する上でも重要である。また、本年度は新たに立体特異的転位反応(oxy-Favorskii反応)を用いて、紅藻由来含臭素アセトゲニン成分の骨格構築にも成功した。紅藻からは様々なアセトゲニン成分が単離されているが、多くの化合物の活性は未解明であり、本研究を起点して、一般合成法の確立ならびに構造活性相関の解明が期待できる。一方、単一溶媒による多段階反応に関しては、シクロペンチルメチルエーテル(CPME)の有用性が広がった。前年度は主にラジカル反応への適用性を検討したが、ヨウ素化や有機亜鉛反応(Reformatsky反応)などにも問題なく使用できることがわかった。その一方で、3級アルコールの酸化転位反応など、収率や再現性が低いプロセスもある。この点は今後改善すべきであり、引き続いてCPMEの反応溶媒としての適用性を精査することが必要である。
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Strategy for Future Research Activity |
ヘリセノン関連化合物の全合成に関しては、官能基の直截導入反応によって合成されたフタリド中間体を利用して、シアノヒドリンのアルキル化とStilleカップリングを鍵反応として今までに10種類以上の天然物の全合成を完了した。今後は、未だ達成されていない化合物群(ヘリセノンC~Hや3-ヒドロキシヘリセノンF)の合成法を開発するとともに、官能基の位置や構造を人工的に作り変えた類縁体を合成し、小胞体ストレスによる細胞死を指標として構造活性相関を検討する。従来の合成法に加え、未合成化合物群の直截合成に特化した新規なコア部の構築法も検討する。一方、含臭素アセトゲニン類の合成に関しては、ハロラクトン化-αブロモ化-oxyFavorskii転位からなる立体特異的分子変換反応を用いて、ローレネニンやローレニディフィシンの全合成を検討する。同様の骨格を持つダイシハーバイン(グルタミン酸受容体アゴニスト)の合成も平行して行い、本手法の適用範囲を拡大する。CPME溶媒による実用合成プロセスについては、溶媒の代替が強く望まれているGrignard反応やReformatsky反応への適用を検討し、開発したプロセスを医薬中間体の合成に応用する。
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Research Products
(10 results)