2012 Fiscal Year Research-status Report
新規「炭素アリル化剤」の開発とそれを用いる直截的有機合成
Project/Area Number |
24550125
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Okayama University of Science |
Principal Investigator |
野上 潤造 岡山理科大学, 工学部, 教授 (70109742)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | allyl-transfer 反応 / 不斉アリル化 / 炭素アリル化剤 / 直截的有機合成 / Nokami alcohol |
Research Abstract |
Allyl-Transfer 反応では,炭素アリル化剤 (C-allyl donor) が酸触媒存在下にアルデヒドを立体特異的にアリル化し,α-付加体ホモアリルアルコールを生成する.本反応では酸触媒によるアルデヒドの活性化が必須であるがアリル化剤(allyl donor)は極めて安定である.すなわち,C-allyl donor 自体は求核性を持たない homoallyl alcohol 誘導体であるから,種々の官能基を有する C-allyl donor の調製が可能であるうえ長期保存も可能である.また,3,3-sigmatropy転位を経由する立体特異的反応であるから光学活性 C-allyl donor を用いれば官能基化された光学活性α-付加体ホモアリルアルコールが合成でき,標的化合物の直截的な有機合成が可能となる. 1. 立体制御機能を持つ C-allyl donor の調製:「標的α-付加体ホモアリルアルコールの絶対立体配置(R, S)の制御およびオレフィンの E, Z の制御を行うことが出来る C-allyl donor を簡便に調製する2つの方法を確立しつつある. 2.高度に官能基化された C-allyl donor の調製:C-allyl donor は求核性の無いアリル化剤であるため,多くの官能基を有する C-allyl donor が調製できる可能性が高い.そこで,エステル官能基を持つ C-allyl donor を調製し Allyl-Transfer 反応による直截的有機合成反応として実用化を進めている. また,それに用いる金属試薬としてはMg, Zn, Ca, Fe, Al などを用い,希少金属(Ir, Pdなど)や有害元素(Sn, Pb, Cr, Mnなど)を用いないC-C結合形成によって C-allyl donor を調製することを検討中である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ここではアルデヒドのアリル化に供する光学活性でしかも必要な官能基を有する種々のC-allyl donor を調製してそれらのアルデヒドとの反応性や安定な試薬としての保存性を調査している.そして,合成したい(標的)α-付加体ホモアリルアルコールを簡便かつ直截的に合成する手法としての Allyl-Transfer 反応を確立することを目的として研究を進めた. 立体制御機能を持つ C-allyl donor の調製:目的とするα-付加体ホモアリルアルコールのR,Sの制御およびオレフィンのE,Zの制御を行うことが出来る C-allyl donor を簡便に合成する方法の確立に向けて研究を進め,すでに(-)-メントールを用いる方法はほぼ確立できた.(+)-メントールも安価に入手できるため,両鏡像体 C-allyl donor が調製できる.しかし,不斉補助基と期待した天然光学活性ケトン,イソメントン,カンファーなどを用いる光学活性 C-allyl donor の開発に向けて調査したがいずれも一長一短あり現時点では実用化には至っていない. 高度に官能基化された C-allyl donor の調製:C-allyl donor は求核性の無いアリル化剤であるため,多くの官能基が共存する C-allyl donor の開発が期待できる.エステル官能基を持つ C-allyl donor を調製し新規有機合成反応剤として実用化できた.これを用いる不斉アリル化には対応する光学活性 C-allyl donor が必要であるが,キラルHPLCによって容易に分割することができた. 直截的有機合成のための高度に官能基化された光学活性 C-allyl donor の調製:有機合成の直截化(必要な官能基を持った必要な炭素鎖の導入)を目的としての C-allyl donor の開発は現在進行中である.
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き,アルデヒドのアリル化に供するための光学活性でしかも必要な官能基を有する種々のC-allyl donorを調製してそれらのアルデヒドとの反応性や安定な試薬としての保存性を調査する.そして,標的とする「官能基を有する光学活性α-付加体ホモアリルアルコール」を簡便かつ直截的に合成する手法としての Allyl-Transfer 反応を確立することを目的としてさらなる研究を進める. 立体制御機能を持つ C-allyl donor の調製:目的とするα-付加体ホモアリルアルコールの R,S の制御およびオレフィンの E,Z の制御を行うことが出来る C-allyl donor を簡便に合成する方法を確立する.天然光学活性テルペン類を不斉助剤とする光学活性allyl donor の調製を検討したが,allyl donor としての反応性が低く実用的でない.そのため新たな観点で調製を試みる. 高度に官能基化された C-allyl donor の調製:C-allyl donor は単独では求核性の無いアリル化剤であるため,多くの官能基が共存する C-allyl donor の実用化が期待できる.エステル官能基を持つ C-allyl donor を調製し新規有機合成反応剤として実用化できた.これを用いる不斉合成には対応する光学活性 C-allyl donor が必要であるが,キラルHPLCによって容易に分割できる. 直截的有機合成のための高度に官能基化された高純度光学活性 C-allyl donor の調製:有機合成の直截化(必要な官能基を持った必要な炭素鎖の高立体選択的導入)を可能とする究極的アリル化反応を確立するための C-allyl donor の調製法の開発を目的として研究を進める.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度は研究補助のための人材が予定通り得られなかったため人件費・謝金の一部を次年度(平成25年度)に繰り越した.またそれにともなって研究の進行が遅れたため,物品費も一部を繰り越した(繰越金額計 562,119 円). 消耗品費: 892,119(円) 実験のための薬品・ガラス器具 旅費: 70,000(円) 成果発表 人件費・謝金: 1,200,000(円) 実験補助員または研究員
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