2013 Fiscal Year Research-status Report
新規「炭素アリル化剤」の開発とそれを用いる直截的有機合成
Project/Area Number |
24550125
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Research Institution | Okayama University of Science |
Principal Investigator |
野上 潤造 岡山理科大学, 工学部, 教授 (70109742)
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Keywords | Allyl-Transfer 反応 / 炭素アリル化剤 / 不斉アリル化 / 直截的有機合成 / 酸触媒 |
Research Abstract |
Allyl-Transfer反応では,ホモアリルアルコールが酸触媒存在下で「炭素アリル化剤」として作用しアルデヒドを立体特異的にアリル化してα-付加体ホモアリルアルコールを生成する。従来の「金属アリル化剤」を用いるアリル化では,金属アリル化剤が不安定である場合が多くまた生成物の立体選択性の制御は容易ではない。にもかかわらずアルデヒドのアリル化反応は炭素延長反応として有機合成に最も頻繁に用いられる反応であることからAllyl-Transfer反応はアリル化反応に新たな一石を投じるものである。すなわち (1)安定で長期保存可能なホモアリルアルコールを「炭素アリル化剤」として用いる。(2)3.3-シグマトロピー転位を経由して立体特異的に進行することから,生成物の立体化学を制御できる。(3)官能基を有するアリル化剤を調製できる。(4)「金属アリル化剤」を用いることができない基質に対しても chemoselective に反応する。(5)光学活性「炭素アリル化剤」の調製が可能で,これを用いる不斉アリル化反応が可能である。 など,従来の「金属アリル化剤」を用いるアリル化反応の不足を補う特長を持っている。光学活性メントール誘導体不斉炭素アリル化剤は光学活性天然物などの合成に用いられ, Nokami alcohol として紹介された。 本研究では,これらの特徴を十分に生かした Allyl-Transfer 反応を開発し,それを用いて種々の官能基や不斉中心を持つ生物活性天然物などの直截的合成を達成することを目的として,(一)生成物の絶対立体配置や E, Z の高い立体制御機能を有する炭素アリル化剤,すなわち「不斉炭素アリル化剤」の簡便合成法の開発。(二)エステルやケトンなどのカルボニル基,ニトロ基,シアノ基などを有する「多目的炭素アリル化剤」の調製法の確立。(三)生物活性天然物の直截的合成 に向けた研究を推進中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ここでは,アルデヒドのアリル化に供する光学活性でしかも必要な官能基を有する種々の「炭素アリル化剤」を調製してそれらのアルデヒドとの反応性や反応剤としての保存性を調査した。現在のところ不斉源の導入にSharpless の不斉エポキシ化を用いなければならないものの満足すべき一つの方法を確立できた。この方法では,いくつかの官能基を有する「高性能 (high performance) 炭素アリル化剤」の調製が可能であることから,現在その適用範囲の拡大と直截的有機合成に向けて研究を進めている。 また,先に述べた光学活性メントール誘導体不斉「炭素アリル化剤」,Nokami alcohol を用いた「未来型有機合成」として,抗菌活性天然16員環マクロライド (-)-A26771B の直截的(短工程)合成を実施中である。Allyl-Transfer反応が酸触媒存在下に「炭素アリル化剤」を用いることによって立体特異的に進行する反応であることから,本合成では保護基を用いることなく不斉炭素骨格構築が可能で,まさに直截的合成が可能であることを実証するものである。これについてはスペクトルデータを整え論文として投稿する。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き新しい「高性能炭素アリル化剤」の開発とそれらの直截的有機合成への応用研究を進める。 また不斉Allyl-Transfer反応による不斉アリル化反応に関しては,新規に,不斉ブレンステッド酸あるいは不斉ルイス酸を触媒とするラセミ体炭素アリル化剤を用いる不斉アリル化反応の開発に挑戦する。最近急進展を遂げつつある種々の不斉有機触媒反応から類推するに,Allyl-Transfer反応においても触媒的不斉反応が可能と期待される。それが可能となれば,不斉Allyl-Transfer反応のための不斉炭素アリル化剤を調製する必要がなくなり,ラセミ体「炭素アリル化剤」を用いる不斉Allyl-Transfer反応を提供することができ有機合成に大きく貢献できる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
適当な研究補助員を確保できなかったため人件費・謝金を繰り越した。またそれに伴って薬品代などの使用量も少なくなり次年度に繰り越すことになった。 消耗品費:334,000(円)実験のための・薬品ガラス器具;旅費:100,000(円)成果発表; 人件費・謝金:800,000(円)研究員雇用または実験補助員
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[Journal Article] Synthetic Access to Poly-substituted 11H-Pyrido[3,2-a]carbazoles, A DNA-intercalating Ellipticine Related Struccture, and Their Antiproliferative Activity2014
Author(s)
Ming-Yu Wu, Elkhabiry Shaban, Marta Switalska, Ning Wang, Miho Shimoda, Yusuke Mizutani, Megumi Yoshida, Zhen-Wu Mei, Hiroyuki Kawafuchi, Junzo Nokami, Joanna Wietrzyk, Xiao-Qi Yu, Tsutomu Inokuchi
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Journal Title
DOI
Peer Reviewed
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