2014 Fiscal Year Annual Research Report
[11C]二酸化炭素を用いた常圧下における高速[11C]カルボン酸合成法の開発
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24550127
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
土居 久志 独立行政法人理化学研究所, ライフサイエンス技術基盤研究センター, チームリーダー (00421818)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | PET化学 / [11C]カルボキシル化 / [11C]二酸化炭素 / 常圧化学反応 / 高速化学反応 / 有機金属化学 / マイクロスケール反応器 / PET分子イメージング |
Outline of Annual Research Achievements |
PET分子プローブの開発研究において、11C-標識カルボン酸官能基の効果的合成法の開発は急務の課題である。本研究では、サイクロトロンから払い出される[11C]二酸化炭素を直接用いて、わずか1段階で目的とする[11C]カルボン酸体を合成するための標識化学反応の開発に取り組んできた。本反応開発では、半減期が20.4分である11C核種の特徴を考慮し、加えて、使用できる[11C]二酸化炭素は極微量(数マイクログラム程度)という11C-標識化学の特殊性を踏まえる必要があった。 そこで、基本反応として、Rh(I)触媒下にフェニルボロン酸ピナコールエステルを基質とした[11C]安息香酸の合成を設定し、本[11C]カルボキシル化の反応条件の最適化を行った。反応条件を鋭意検討した結果、約-98℃の低温下で[11C]二酸化炭素を冷却濃縮し、続いて、アセトン溶媒中、Rh(I)触媒を用いた常圧条件下において反応を行った。その結果、わずか5分の反応時間で、目的の[11C]安息香酸を実用的な収率(崩壊補正放射化学収率:50%)で得ることができた。本反応では、副生成物はほとんどなかった。なお、基質となる有機ホウ素化合物の使用量の削減に向けて、マイクロリアクターを用いたマイクロスケール下における反応開発にも取り組んだが、[11C]二酸化炭素を効率良く捕獲(濃縮)するという点において困難を極めた。すなわち、究極目標である「マイクロリアクターを用いた[11C]カルボキシル化反応の開発」に取り組んだが、残念ながら、それは実現できなかった。しかし、先述の[11C]安息香酸の合成結果にあるように、基本となる[11C]カルボキシル化法の開発は達成することができたと言える。本件は従来型の標識用合成装置を用いた手法であるので、当分野における一般性の観点からは、むしろ本手法の有用性は大きいと考えられる。
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