2012 Fiscal Year Research-status Report
遷移金属錯体を用いる新規活性化法を基軸とする酸化的不斉触媒反応
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24550128
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
五月女 宜裕 独立行政法人理化学研究所, 袖岡有機合成化学研究室, 研究員 (50431888)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 有機合成化学 / 不斉触媒 / 遷移金属 / 酸素 / 酸化 / 不斉合成 |
Research Abstract |
様々な不斉反応へと展開可能な力量ある触媒システムを構築するためには、新しいコンセプトに基づく反応基質の活性化法の開発が鍵を握る。本申請課題では、分子の複雑性を効率的に増幅させるための方法論として、分子状酸素を用いる触媒的ヒドロキシル化反応の開発に焦点を当てる。これにより、光学活性合成素子として医薬品において高いニーズがあるにもかかわらず、十分に有用な合成法の少ないキラル3級アルコールの直截的合成法を提供することを目指している。 研究初年度に当たる平成24年度は、作業仮説に基づき、まずアキラルな遷移金属錯体触媒と反応基質について系統的な検討を行った。その結果、1気圧の酸素雰囲気下、イミド類を基質として用いた場合、目的とするヒドロキシル化反応が効率的に進行することを見出した。更に、触媒的不斉化についても系統的な検討を行い、当研究室で開発したパラジウム触媒を用いた場合、酸素雰囲気下、良好な化学収率及びエナンチオ選択性でヒドロキシル化反応が進行することを見出した。この反応では、還元剤を用いる事なく分子状酸素の酸素-酸素結合を切断し、対応するキラル3級アルコールを得ることができる点が特徴である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、これまで当研究室で蓄積してきたキラルエノレートの化学を基盤に分子状酸素を酸化剤として用いる触媒的不斉ヒドロキシル化反応の開拓を目指している。昨年度は、作業仮説に基づき、72%収率、88% eeの不斉収率で分子状酸素を用いたヒドロキシル化反応が進行することを見出すことができた。従来の酸化反応の多くは、有効酸素含有率の低い化学的酸化剤を用いており化学要論量の廃棄物の副生を伴う。また「酸素」を用いる立体選択的な酸化反応の開発例も少ないことから、付加価値の高い触媒的不斉酸化反応の1つを見出すことができたと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
上述の通り、本年度は分子状酸素 (1 atm) を用いるイミド類の触媒的不斉ヒドロキシル化反応のプロトタイプを創出することができた。この反応では、副生成物が生成する反応経路との競合が解決すべき課題として残されている。今後は、まず反応溶媒、濃度、反応温度や添加剤等のパラメーターについて系統的な検討を行い、副反応を抑制することを目指す。 生体では大気中に約20%含まれる酸素を用いて、多くの酸素酸化が営まれている。そこで平成25年度はこれらの知見を基盤に、空気を用いる触媒的不斉ヒドロキシル化反応の開発を展開する。また、基質一般性についても検討を行い、分子触媒を用いる酸素酸化反応の適用範囲を拡張することを目指す。 反応機構解析に基づく触媒活性種の同定、酸素分子の酸素-酸素結合の切断機構の解明も残された重要な検討課題である。これらの反応機構について各種スペクトル解析を用いて解明を行い、分子状酸素を酸化剤として用いる酸化的不斉反応を設計するための基礎的知見を収集する。これにより、より挑戦的な新規酸化的不斉反応の開発へと更に展開することを試みる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は、博士研究員 (1名)、学部学生 (1名) に研究代表者を含めて計3名体制で研究を推進する予定である。有機合成試薬及びガラス器具を含む消耗品費として3名体制で1000千円の使用を計画している。また、国内学会にも積極的に参加する予定であり、150千円を見積もっている。 平成25年度で計画する反応機構解析、更に複雑な生成物を構築する反応開発では、通常のシリカゲルカラムでは分離できない極性の近い異性体の分離と構造決定が研究進展のための鍵を握る。そこで平成24年度に申請した直接経費のうち逆相及び順相の分取HPLCカラムを購入する予算分を繰り越すこととした。また、シンガポールで開催されるThe 15th Asian Chemical Congressでの口頭発表の招待を平成24年1月に受けたため、その分の旅費(250千円) も平成25年度に繰り越して算出している。 以上の試算に基づき、平成25年度は消耗品費1800千円、旅費400千円を使用する予定である。
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Research Products
(1 results)