2013 Fiscal Year Research-status Report
遷移金属錯体を用いる新規活性化法を基軸とする酸化的不斉触媒反応
Project/Area Number |
24550128
|
Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
五月女 宜裕 独立行政法人理化学研究所, 袖岡有機合成化学研究室, 研究員 (50431888)
|
Keywords | 有機合成化学 / 不斉触媒 / 遷移金属 / 酸化 / 不斉合成 |
Research Abstract |
本申請課題では、分子状酸素を用いる触媒的α-ヒドロキシル化反応の開発に焦点を当てている。これにより、光学活性合成素子として医薬品において高いニーズがあるにもかかわらず、十分に有用な合成法の少ないキラル3級アルコールの直截的合成法を提供することを目指している。 昨年度見出した反応条件を基盤に、本年度は従来法では実現困難な反応への展開に特に力をいれた。即ち、N-Boc-オキシインドールを基質とする触媒的不斉α-ヒドロキシル化反応の開発に焦点を当てた。これまでに、酸素雰囲気下、過剰量の塩基と相関移動触媒を用いてN-PMB-オキシインドールの触媒的不斉ヒドロキシル化反応が報告されているが、本基質を用いた場合には低温条件下においても分解反応が進行するため目的とする3級アルコールが得られないことも示されていた。そこで、昨年度見出した反応条件を基盤に、N-Boc-オキシインドールを基質とする触媒的不斉α-ヒドロキシル化反応の検討を行った。その結果、複数の副生成物が生じるため化学収率及び不斉収率はともに低いものの、我々が開発したキラルパラジウム錯体触媒用いる反応条件では、対応するキラル3級アルコールが得られることを見出した。更には、本触媒を用いるα-ヒドロキシル化反応において副反応を効果的に抑制するためには、反応溶媒の選択が重要であることが分かった。これにより、強塩基と還元剤を必要とせず、室温下、分子状酸素を用いるN-Boc-オキシインドールの触媒的不斉α-ヒドロキシル化反応を見出すことに成功した (up to 81% 収率、90% ee)。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度の得られた知見を基盤に、従来法では実現困難な酸素を用いるα-ヒドロキシル化反応を見出すことに成功した。また、従来問題となった副生成物が生じる反応経路についても検討を行い、複雑な反応機構について知見を得ることができたため。
|
Strategy for Future Research Activity |
当初の想定よりも、複雑な反応経路が内在することを明らかにすることができた。今後は、得られた知見をもとにより高度な酸化的不斉触媒反応の開発にも取り組む予定である。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
分子状酸素を用いるヒドロキシル化反応は一見シンプルな反応であるが、複雑な反応経路が内在しその選択性の制御が極めて難しいことがH25年度の初期に分かった。不斉触媒制御により選択性をスイッチさせることは分子の複雑性を効率的に増幅させるために重要な課題であり、本研究ではこのN-Bocオキシインドール類に焦点をあて、詳細な反応条件検討を行った。H26年度は、これらの知見を基盤に、より多彩な基質を用いるα-ヒドロキシル化反応への展開、更には新規酸化的不斉炭素-炭素結合形成反応への展開を行うことを計画している。その際、redoxをより効率的に制御するために、高価な金属やキラルリガンドを用いて検討することを計画しており、研究資金を繰り越すこととした。 最終年も、博士研究員 (1名)、学部学生 (1名) に研究代表者を含めて計3名体制で研究を推進する予定である。有機合成試薬及びガラス器具を含む消耗品費として1名あたり600千円、即ち、3名体制で1800千円の使用を計画している。また、場所は未定であるが、学術会議において積極的に成果を発表する予定である。
|