2012 Fiscal Year Research-status Report
表面プラズモン共鳴による硫酸化糖鎖の抗ウイルス性メカニズムの解明
Project/Area Number |
24550129
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kitami Institute of Technology |
Principal Investigator |
吉田 孝 北見工業大学, 工学部, 教授 (40166955)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中島 秀喜 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 教授 (20192669)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 糖鎖 / 相互作用 |
Research Abstract |
我々はこれまでに合成および天然糖鎖を硫酸化した硫酸化糖鎖は高い抗HIV作用を持つことを見出した。特に天然のカードランを硫酸化したカードラン硫酸は、低毒性で高い抗HIV作用を示すことを明らかにした。さらにカードラン硫酸を固定化したメンブレンフィルターは、A型インフルエンザウイルスを特異的に吸着できることを見出した。平成24年度では、生理活性の研究例も少ない天然のガラクトマンナン類の硫酸化を行い、高い抗HIV活性及び抗凝血性があることを見出し、そのメカニズムはガラクトマンナンは枝分かれの多糖で、ウイルスなどの表皮タンパク質との相互作用が強いからと考えた。高分子医療材料化を目的に抗ウイルス性やメカニズムについて調べた。ガラクトースとマンノースの割合が異なる4種類のガラクトマンナン(FG, GG, TG, LG)を硫酸化し、硫酸化度の異なる硫酸化糖鎖を合成した。抗HIV作用、抗凝血性作用を標準のカードラン硫酸およびデキストラン硫酸と比較したところ硫酸化ガラクトマンナンは高い抗HIV、抗凝血性作用を示すことを見出した。これまでの研究から6炭糖からなるカードラン硫酸などの直鎖状糖鎖は5炭糖からなるリボフラナンなどの糖鎖に比べ抗凝血性は低くなったが、ガラクトマンナンは分枝構造により糖タンパク質との相互作用が強いため抗凝血性や抗ウイルス性が高くなると考えた。詳細な作用メカニズムためには、SPRによって硫酸化糖鎖とウイルスの塩基配列に基き合成したオリゴペプチト及びポリリジンなどとの相互作用を定量的に調べたところ、硫酸基の(-)電荷とリジンなどの(+)電荷との間で強い静電的相互作用により硫酸化糖鎖の抗ウイルス性が発現するものと推定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本申請研究では、これまでの成果を踏まえ、種々の構造明確な硫酸化糖鎖とウイルス由来タンパク質との静電的相互作用を高分解能NMR装置やSPR装置を用いて定量的に解明する基礎研究を目的にしている。平成24年度では天然糖鎖のガラクトマンナンを硫酸化しポリリジン等との間で相互作用をSPR等を用いて測定することに成功した。糖鎖の構造は600MHz高分解能NMR装置を用いて解析することができた。今後はウイルスペプチド等も用いてより詳細に検討していく。
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Strategy for Future Research Activity |
天然糖鎖は複雑な分枝構造や種々の糖を含有し特異な生理活性を持つ。25年度ではこれまで生理活性を解明してきた漆多糖類やヘパリンなどの天然糖鎖を用いてウイルスタンパク質との相互作用を定量的に解明する。24年度ではウイルスペプチドのモデル化合物としてポリリジンを使用し、高い静電的相互作用を示すことを見出した。それらの得られた結果と合わせて解析し糖鎖構造と生理活性との関係をSPRや高分解能NMR装置などを用いて定量的に解明する。糖鎖は、可能なら無水糖類の開環重合法によって得られた直鎖状および分枝構造を持つ立体規則性糖鎖も使用する。構造明確な糖鎖はウイルス等との相互作用を調べる上で必要と考える。ウイルスとの相互作用は聖マリアンナ医科大学・中島秀喜教授との共同研究やシンガポール国立大学医学部・山本直樹教授と連携研究などによって推進する。 平成24年度では、測定予定していた質量分析装置が故障し、そのためにその消耗品費等に残額が生じた。平成25年度初めに質量分析装置の修理が完了したので、残金は平成25年度に合わせて使用する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度では、別予算で予定していたペプチド合成装置の納入が年度末になったため、予定していた実験ができなくなったため、繰越金が生じた。 平成25年度では、別予算で購入したペプチド合成装置や質量分析装置、表面プラズモン共鳴装置、高分解能NMR装置など大型の分析装置を駆使して糖鎖構造と生理活性との関係を詳細に検討していく。また、聖マリアンナ医科大学・中島秀喜教授や国立シンガポール大学医学部の山本直樹教授等との連携研究等を通してHIVや他のウイルスに対する硫酸化糖鎖の抗ウイルス性などについても検討する。 これらの研究に使用するために、前年度の繰越金も充てる。滅菌に必要な小型のオートクレーブを購入予定であり、研究打合せのための旅費等にも使用予定である。
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[Patent(Industrial Property Rights)] 特願2012
Inventor(s)
瓜生 敏之、吉田 孝、かつら谷 要
Industrial Property Rights Holder
瓜生 敏之、吉田 孝、かつら谷 要
Industrial Property Rights Type
特許
Industrial Property Number
2012-206325
Filing Date
2012-09-19