2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24550130
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
福元 博基 茨城大学, 工学部, 准教授 (70313369)
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Keywords | π共役高分子 / 遷移金属錯体 |
Research Abstract |
本研究では、新たな電子・光機能材料の創製を目的として、(1)ポリエンのπ電子系をスペーサー、レドックス活性な遷移金属のd電子系をアンカーとする新たな有機π共役-遷移金属複合系の構築、(2)構築した複合系の基本的な化学的性質を明らかにし、機能材料開発へ展開するための評価について順次行う予定である。 25年度では、24年度に引き続き骨格となるポリエン誘導体、Ar-(CH=CH)n-Ar(n = 2 - 6)の合成を行った。24年度のテトラエン(n=4)に加えて、トリエン(n=3)の両末端にビピリジン(bpy)が結合した化合物の合成を行った。得られたポリエン(n=3,4)のRu(II)錯体の合成も行い、分子構造をNMR測定により明らかにした。合成したRu(II)錯体の電気化学的測定を行ったところ、Ru(II)⇔Ru(III)に対応するレドックスが観測された。しかしながら、ポリエンの両末端のルテニウム間の電子的相互作用は極めて小さいこともわかった。 また、24年度の終盤から、全てフッ素に置き換えた環状オレフィンであるシクロオクタフルオロペンテン(OFCP)をスペーサー、レドックス活性なフェロセンをアンカーとして導入した新たな複合系の構築についても検討を行い、25年度は、フェロセンユニットをOFCPで架橋した2核、3核鉄錯体とモデルとなる単核錯体の合成を行った。また、分子構造をX線結晶構造解析により明らかにした。合成したFe(II)多核錯体の電気化学的測定を行ったところ、2核錯体では二つの鉄中心は架橋OFCPによって電子的相互作用が存在していることがわかった。一方、3核錯体ではコアのフェロセンユニットの鉄中心と末端フェロセンユニットの二つの鉄中心とはお互いに相互作用しているが、両末端間の鉄同士は距離が遠いため、電子的相互作用は弱いことも見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
25年度では、合成したポリエン誘導体の錯体合成と電気化学的測定を目的の中心とした。24年度は研究代表者が現職に異動したばかりで、研究体制を一から構築するところから始めたのに加え、25年度は学科棟の改修工事のために、夏以降から現在まで化学合成を行うには程遠い研究環境での研究を強いられてきた。それにもかかわらず、当初のポリエン錯体の合成と電気化学的測定に加えて、新たな有機π共役-遷移金属(鉄(II))複合系の構築とその電気化学的測定まで行えたことから、おおむね順調に進展していると判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
基本的には、本研究の応募申請書ならびに交付申請書に従って研究を遂行する。具体的には、鎖長の一番短いポリエンであるモノエン(n=1)誘導体のルテニウム(II)錯体の合成とその電気化学的測定を行い、24、25年度で得られた成果と併せて、構築した有機π共役-遷移金属(ルテニウム)複合系について総合的に評価する。また、OFCPをスペーサー、レドックス活性なフェロセンをアンカーとして導入した新たな複合系については、電気化学的応答、エレクトロクロミズムなど電子・光機能材料に求められる機能特性についても明らかにする
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当研究者の所属する学科の改修工事が平成25年の8月から始まり、引っ越し等で研究を1か月中断した上、建物改修終了時までの一時的な研究スペースがかなり狭いために、安全上、薬品を用いた研究活動にかなり制限がかかった。その影響で、試薬、消耗品等にかかる費用が年度初めの見積よりもかなり少なくなったことから、25年度の実収支額も少なくなったと考えている。 上記で述べた状況は平成26年の7月で解消予定である。25年度に実施できなかった目的化合物の合成等を行うのに必要な試薬類、ガラス器具などを26年度に使用する分と合わせて購入する予定である。また、これまでの研究成果を複数の論文として発表する予定であり、これにかかる費用にもあてる。
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Research Products
(6 results)