2012 Fiscal Year Research-status Report
一軸配向ポリペプチド液晶ゲルの異方的膨潤-収縮挙動に関する研究
Project/Area Number |
24550133
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
猪股 克弘 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (80232578)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ポリペプチド / ゲル / 液晶 / 形状変化 / 刺激応答 / ヘリックス‐コイル転移 / 階層構造 |
Research Abstract |
α-ヘリックス構造の棒状ポリペプチド鎖が一軸的に配向した液晶ゲルでは、ポリペプチド鎖がヘリックス構造からランダムコイルに転移した際に、ゲルのマクロな異方的形状変化が起こる。本研究では、この異方的膨潤-収縮挙動がゲル中の階層的構造形成に由来しているとの発想から、ポリペプチド鎖としてポリ[N5-(2-ヒドロキシエチル) L-グルタミン](PHEG)あるいはPHEG同族体を用い、一軸配向ポリペプチド液晶ゲルの膨潤挙動を分子論的に解明することを目的としている。平成24年度は、以下の2種類の試料系を調製し、コンホメーション変化と膨潤挙動について検討した。 (1) 架橋剤濃度の異なる液晶ゲルの調製と異方的膨潤-収縮挙動 架橋剤濃度が異なる一軸配向PHEG液晶ゲルを調製した。PHEGは溶媒が水の場合にランダムコイル、エチレングリコールの場合にα-ヘリックス構造となる。架橋剤濃度が増加するにつれて膨潤度が低下したが、溶媒が水の場合、架橋剤濃度の低い場合により大きく膨潤した。架橋剤濃度が低い試料では、PHEG配向方向とそれと垂直方向との膨潤・収縮挙動に異方性が現れたが、架橋剤濃度が高い場合には異方性は弱かった。 (2)ポリペプチド液晶ゲルの温度応答性の異方的膨潤-収縮挙動 PHEG鎖の同族体で、側鎖が3-ヒドロキシプロピル基と5-ヒドロキシペンチル基からなる共重合体であるポリペプチドを用いて、一軸配向ゲルを調製した。このポリペプチドは水溶液中で、高温ではランダムコイル、低温ではヘリックス構造を取る。これらの試料でも、温度変化に伴い分子鎖配向方向と垂直方向とで異方的な膨潤・収縮挙動を示した。さらに、温度上昇によるポリペプチド鎖の溶解性の低下も起こり、膨潤挙動は複雑に変化した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書では、様々なポリペプチド液晶ゲルの調製とその形状変化挙動における階層構造の解明を、研究の目的と設定した。平成24年度は、架橋剤濃度の異なるゲルの調製を行い、その異方的膨潤-収縮挙動の架橋剤濃度依存性について検討した。また、ヘリックス-コイル転移が溶媒組成変化ではなく温度変化によって誘起されるポリペプチドを用いた液晶ゲルの調製も行い、この試料についても、温度変化に伴ってゲルが異方的に膨潤-収縮することを確認するとこができた。このように、ポリペプチド液晶ゲルの異方的膨潤-収縮挙動は、系を適当に設定することで普遍的に観測される現象であることを明らかにしており、順調に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに調製法を確立した、溶媒や温度の変化に伴い異方的膨潤-収縮挙動が起こるゲルを用いる。外部環境を徐々に変化させ、ヘリックス-コイル転移の発現とそれに伴う形状変化、さらには、分子レベルの構造変化と巨視的レベルの形状変化を繋ぐ階層構造について、段階的に測定・解析を行っていく。 その際、各種構造のキャラクタリゼーション手法が問題となるが、赤外吸収スペクトル、円二色性スペクトル、核磁気共鳴スペクトル、偏光顕微鏡、X線散乱、弾性率測定等の複数の実験手法を適宜行い、総合的に判断する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
2013年度は、これまでに調製した2種類のゲル、すなわち溶媒組成で変化するPHEGゲルと、温度により変化するポリペプチドゲルを用いて、溶媒組成あるいは温度を徐々に変えた場合の、コンホメーション変化については赤外吸収スペクトルあるいは円二色性スペクトルで、液晶性については偏光顕微鏡あるいはX線散乱で、架橋構造については膨潤度と力学特性で、形状変化については目視あるいはCCDカメラで、それぞれ測定する。各種階層構造について得られた知見を総合し、どのような機構で、モノマー残基のスケールでの相互作用変化がゲルのマクロなサイズの変化にまで及ぶのかを考察する。 さらに、上記の考察をより深く検討するための新規なゲルとして、低分子量の高分子を用いる、あるいは高分子濃度を低下させてゲル化するなど、ポリペプチド鎖の液晶相形成に影響を及ぼす要因が異なる試料の調製を試みる。これらの試料における階層構造変化も同様に測定し、それらを比較することで、分子レベルの構造変化と巨視的レベルの形状変化を繋ぐ階層構造について明らかにしていく。
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Research Products
(8 results)