2012 Fiscal Year Research-status Report
パーフルオロアルキル基の自己組織化による環境応答性ポリマーフィルムの創製
Project/Area Number |
24550140
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
杉山 賢次 法政大学, 生命科学部, 教授 (20282840)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 高分子合成化学 / 精密合成 / 官能基化ポリマー / 機能性フィルム / 外部環境応答性 / パーフルオロアルキル基 / シンナモイル基 / 光二量化反応 |
Research Abstract |
本年度は,種々の末端官能基化ポリマーの精密合成の第一段階として,光架橋性を示すシンナモイル基と表面自己組織化のトリガーとなるパーフルオロアルキル(Rf)基を同時に鎖末端に有するポリスチレンの合成を試みた.合成したポリマーはすべて新規化合物であり,高分子合成の面で新しい.本研究の最大の特徴は,1,1-ジフェニルエチエレン(DPE)誘導体の分子設計を工夫することで望みの官能基を任意の数,ポリマー鎖末端へ導入できることである.ここで種類の相異なる官能基,すなわちシンナモイル基とRf基を同時に有するDPE誘導体を新たに分子設計することで,目的の官能基化ポリマーを得ることを考えた.異種の官能基が同時に導入されたDPE誘導体の合成例は極めて少ないが,新規DPE化合物合成の面から,その合成に成功したことは意義がある. もう一つは,得られポリマーを用いた外部環境応答性フィルムの構築である.Rf基の表面濃縮と自己組織化を確認した後,UV光照射による表面構造の変化を定量的に議論した.上記で得られたシンナモイル基とRf基を同時に含むポリスチレンを製膜し,シンナモイル基の光架橋性を利用したフィルム表面の固定化を行った.固定化反応後のポリマーをサイズ排除クロマトグラフ(SEC)を用いて分析することで,UV光(360nm)の照射時間に対するシンナモイル基の光二量化反応が数時間かけて進行することを明らかとした.また,反応によってRf基が表面に固定され,撥水撥油性が向上することをX-ray Photoelectron Spectroscopyと接触角計から確かめた. 以上の結果より,本年度は官能基化ポリマーの新規合成を行うとともに,外部環境変化(UV照射)に応答し表面特性を向上させる高機能性フィルムの創製に成功した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は,光架橋性を示すシンナモイル基と表面自己組織化のトリガーとなるパーフルオロアルキル(Rf)基を同時に鎖末端に有するポリスチレンの合成に成功した.本研究の目的の一つである,種々の末端官能基化ポリマーの精密合成の第一段階として確実な成果が得られた.さらに,得られたシンナモイル基とRf基を同時に含むポリスチレンを製膜し,シンナモイル基のUV照射による光架橋性を利用したフィルム表面の固定化によって,Rf基が表面に固定されフィルム表面の撥水撥油性が向上することを確かめた. 末端官能基化ポリマーの合成に加え,外部環境変化(UV照射)に応答し,表面特性を向上させる高機能性フィルムの創製に成功したことから,本研究の進展は当初の計画以上に順調である.
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Strategy for Future Research Activity |
異種の官能基が同時に導入された末端官能基化ポリマーの合成をさらに推し進めるため,本年度成功したシンナモイル基に加え,アミノ基やアゾ基を有するポリマーの合成を試みる.さらに,アミノ基を導入したポリマーについては,パーフルオロアルキルカルボン酸とアミノ基のイオン結合によるRf基の導入を行う.アミノ基とアミノ基カルボキシル基の反応は通常,室温で定量的に進行するが,ポリマー鎖末端に導入されたアミノ基との反応においては反応条件の最適化が必要になると考えられる. 次に,シンナモイル基の固定化反応の詳細を検討するとともに,イオン結合で導入されたポリマーフィルム表面における選択的な脱Rf基反応を行う.これによって、フィルム最表面には目的のアミノ基のみが濃縮し,これまでにない高機能化ポリマーフィルムが得られると考えられる.用いる官能基やポリマー主鎖の種類,脱Rf基化反応の条件を様々に変化させることで,目的の高機能化ポリマーフィルムの調製を試みる.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
種々の末端官能基化ポリマーの合成を行うために必要な合成試薬類,ガラス器具類を購入する.特に本研究の特徴であるポリマーの精密合成には安定的な真空条件が必要なため,真空バルブ付きガラス器具類が必須である. アミノ基やアゾ基が導入された末端官能基化ポリマーを用いて,フィルム表面におけるシンナモイル基の光二量化反応の条件(波長,時間)をより詳しく定量的に検討するために,最新型のLED式スポットUV照射装置を購入する.
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