2013 Fiscal Year Research-status Report
パーフルオロアルキル基の自己組織化による環境応答性ポリマーフィルムの創製
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24550140
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
杉山 賢次 法政大学, 生命科学部, 教授 (20282840)
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Keywords | 高分子合成化学 / 精密合成 / 末端官能基化ポリマー / 機能性フィルム / 外部環境応答性 / パーフルオロアルキル基 / クマリン基 / 光二量化反応 |
Research Abstract |
昨年度成功したシンナモイル基に加え,同じく光応答性を示す官能基であるクマリン基を含む新規末端官能基化ポリマーを合成した。すでに報告した通り,シンナモイル基の光二量化反応を利用することで,フィルム表面の固定化反応が進行し,撥水・撥油性が向上することが明らかとなっている。ただし,このシンナモイル基の反応は非可逆的であるため,フィルムを固定化する場合において効果的である。一方,本年度研究対象としたクマリン基は,波長の異なるUV光を照射することで,二量化反応(365 nm)と開裂反応(254 nm)を可逆的に起こすことが知られている。そこで,クマリン基の特性を活かして,フィルム表面の分子運動性を制御することが出来れば,照射UV光の波長変化(外部環境変化)に応答した機能性表面が構築できると考えた。 鎖末端にクマリン基を有する官能基化ポリマーは,昨年度報告した1,1-ジフェニルエチエレン(DPE)誘導体を用いた精密合成法により合成した。DPE誘導体の特異な反応性により,クマリン基の導入数(今回は両末端に2個ずつ計4個)は厳密に規制されている。得られた末端官能基化ポリマーを製膜し,撥水・撥油性を指標に,クマリン基の可逆的な光二量化反応に伴うフィルム表面の外部環境変化応答性(光応答性)について検討した。まず,SECカーブの形状変化より,UV(365 nm)照射による二量化反応は20分間で約30%まで進行し,60分間でほぼ飽和することが示された。つぎにフィルム表面の接触角測定より,照射するUV光の波長を365 nm,254 nm,再び365 nmへと順次変化させると,撥水・撥油性が追随し,動的に変化することが観察された。したがって,クマリン基の可逆的な光反応性を利用した,外部環境変化に応答する機能性フィルムの構築に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は,可逆的な光反応性を示すクマリン基を鎖末端に有するポリマーの精密合成に成功した.さらに,クマリン基の特性を活かし,得られたポリマーフィルムに波長の異なるUV光を照射することで,表面の分子運動性を変化させ,撥水・撥油性を制御することに成功した。昨年度示した,シンナモイル基の光架橋性を利用したフィルム表面の撥水・撥油性の向上に加え,本年度は新たに,外部環境変化に応答した機能性フィルムの開発に成功した。以上より,本研究の進展は当初の計画どおり順調である.
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Strategy for Future Research Activity |
刺激応答性の官能基が導入された末端官能基化ポリマーの合成と,これらを用いた外部環境変化に応答する機能性フィルムの構築を推し進める。これまでのシンナモイル基,クマリン基に加え,アゾ基を有するポリマーの合成とフィルム表面の構造解析を行う。これらの研究を通じて,光応答性を示す機能性フィルムの開発を推進する。 一方,新たな刺激応答性の官能基として,pH応答性を示す第四級アンモニウム塩の導入を試みる。具体的には,ポリマー鎖末端に第三級アミノ基を導入した後,これをパーフルオロアルキルカルボン酸と反応させることで,第四級化(イオン結合の形成)を行う。イオン結合は,中性条件では安定であるが,pHによって解離することが知られている。そこで,pH変化をトリガーとして,イオン結合で導入されたパーフルオロカルボン酸をフィルム表面で選択的に除去することができれば,極性基であるアミノ基が表面濃縮した,高機能化ポリマーフィルムが生成することが期待される。
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