2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24550143
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
大澤 雅俊 北海道大学, 触媒化学研究センター, 教授 (00108466)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 表面増強赤外分光 / 表面反応機構 / 電極触媒 / 燃料電池 / 固液界面 / 第一原理計算 / 防錆油 / 界面活性剤 |
Research Abstract |
1.Pt電極触媒表面でのギ酸酸化反応機構:ギ酸を燃料とする燃料電池の開発が期待されているが、その中核となるギ酸の酸化反応機構は、過去40年にわたる研究のもかかわらず依然不明のままである。われわれは、反応が進行している触媒表面に二座配位のギ酸イオンが吸着していることを初めて見出し、詳細な検討から反応中間体であることを提案した。これに対し、他の研究者から、ギ酸が直接反応するという異論が唱えられ、以後5年間にわたって論争が続いている。今年度、反応のpH依存性を検討し、強酸中でもギ酸がギ酸イオンとして反応していることを初めて見出した。過去の研究で全く顧みられていなかった反応経路であり、これまでの論争での混乱が、この最も重要な反応経路に気が付かなかったために起こっていたことを明らかにした。また、pH = pKaで反応速度が最大になることを実験的・理論的に明らかにした。この結果は、メタノールなどの他の分子に当てはまる一般則で、今後の燃料電池開発に大きな影響を及ぼすと期待される。 2.電極表面に吸着した分子の振動数の電位依存性の理論解析:電極に吸着した分子の吸収バンドは、電位によってシフトする。その原因について、Stark効果とする説と、電子供与・逆供与説があり、未解決である。本研究では、Ptに吸着した硫酸イオンの第一原理計算により、Stark効果が主因であることを明らかにした。現在、他の分子吸着系に拡張中である。 3.金属材料の防錆油の作用機構:圧延鋼板を加工するまでの間に、錆を防ぐために防錆油が用いられる。ある種の界面活性剤を油に添加すると効果が格段に向上することが経験的に知られているが、その理由は未知である。表面増強赤外分光を用いた金表面での測定で、効果が高い分子ほど表面によく吸着することを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
ギ酸の電極触媒反応機構の研究は5年越しの研究課題であるが、視点を変えることにより本年度で一気に解決に至った。これまでの常識を覆す結果であり、他の分子に拡張できる一般則を見いだしたことで、学術的価値が非常に高いと認識している。また、燃料電池等の発展ならびにそれに伴うエネルギー・環境問題解決につながると期待される。その他の研究テーマに関しては、固液界面現象・反応の第一原理計算手法の獲得を兼ねて行った研究が予想通りの結果が得られ、順調に推移している。防錆油の研究は、鉄などの実用金属にまでの拡張には至っていないが、金を用いたモデル系では成功したことで、次年度への足掛かりが得られている。以上総合すると、当初の計画以上に進展していると認識している。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度見いだした有機分子を燃料とする燃料電池の電極触媒反応に当てはまる一般則に基づいて、メタノール、エタノール、プロパノール等の電極触媒反応のさらに詳細な検討を継続する。防錆油の作用機構の分子論的検討では、順次銅、鉄へと展開する。さらに腐食抑制機構へと展開する足掛かりとなるはずである。第一原理計算に関連する課題として、固体表面での光励起電子移動過程の理論的・実験的展開を目指す。次年度からの新規テーマとしては、バイオセンサーの基礎として、固液界面でのアミノ酸分子の吸着と酸化反応機構の解明に取り組む。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度に生じた未使用額は、平成25年度に実施する計画のうち、物品費(消耗品)に充てる。
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Research Products
(27 results)