2012 Fiscal Year Research-status Report
非対称ビアリールを基盤とする二官能性レセプターによる分子認識
Project/Area Number |
24550144
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
近藤 慎一 山形大学, 理学部, 教授 (20281503)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ビアリール / クロモフォア / フルオロフォア / 分子認識 / 認識部位 |
Research Abstract |
我々はこれまでに2,2’-ビナフタレンや2,2’-ビアントラセンに二つの認識部位を導入したレセプターを用いて、特徴的なUV-visならびに蛍光スペクトル変化によって対象ゲストの認識情報を出力可能なレセプターを構築してきた。しかしながら、これまで合成してきたレセプターは、アリール骨格と認識部位がそれぞれ対称であった。そこで本研究では左右の芳香環や導入する認識部位がそれぞれ異なるビアリール型のレセプターを構築することで、これまで以上により高次な分子認識を達成することにある。 本年度はクロスカップリング反応を用いて、認識部位もしくはアリール骨格が非対称なビアリール誘導体の合成経路について検討した。ホウ素エステルを鍵中間体とした鈴木-宮浦カップリングを用いることによって、アンモニウム基とカルボキシレート基を認識可能な、一方にアザクラウンエーテル、他方に尿素部位を導入した非対称2,2’-ビナフタレン誘導体の合成に成功した。また、アリール骨格が非対称なビアリールとして、フェニルナフタレンやナフチルベンゾチオフェン誘導体について設計し、スズ誘導体を用いた右田-小杉-Stilleカップリングを用いることでその合成経路を確立した。これら誘導体のそれぞれのアリール基上に認識部としてアザクラウンエーテルをメチレン鎖を介して結合させた。いずれの中間体にも様々な官能基を導入することが可能であり、今後様々なレセプターを構築することが可能になると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は大きくわけて、二種類の非対称ビアリールを基盤としたレセプターの構築を試み、その合成経路の確立を目的に検討を行った。すなわち、認識部位が非対称なレセプターとアリール基が非対称なレセプターの構築である。その結果、アザクラウンエーテルと尿素部位を導入した非対称2,2’-ビナフタレン誘導体の合成に成功し、さらにそれぞれのアリール基にアザクラウンエーテルを導入したフェニルナフタレンとナフチルベンゾチオフェン誘導体の合成に成功した。これらの成果は本年度の研究計画に沿ったものであり、全体の研究計画から現在までの達成度はおおむね順調に進展していると考えることができる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はまず、これまでに合成した非対称ビアリールを基盤とするレセプターについて、種々のゲストとの会合を紫外-可視吸収スペクトル、蛍光スペクトル、質量分析スペクトル、核磁気共鳴スペクトルなど種々の分光学的手法を用いて解明することが必要である。これまでに行なっていた滴定に加えて、有機溶媒への溶解度の低いアミノ酸やその誘導体については固-液抽出や液-液抽出についても検討する。さらに会合が確認された場合には円二色性スペクトルなどを用いて、ビアリール周りの情報を得る。また単結晶の単離についても試みて、会合体についてのより詳細な情報を得る。一方で、他のビアリール誘導体の設計と、そのより簡便かつ高収率な合成経路を確立することで、より多くのバリーエーションを得るための方法論を構築する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度は予定していた旅費が少額ですんだため、92,112円の繰越が発生したものの、おおむね計画通りの支出を行ったと考えている。本繰越額と次年度の助成金をあわせて、おもに合成や測定用の試薬やガラス器具などの消耗品の購入にあてて、今後の研究計画に沿った使用を行う予定である。
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