2013 Fiscal Year Research-status Report
非対称ビアリールを基盤とする二官能性レセプターによる分子認識
Project/Area Number |
24550144
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
近藤 慎一 山形大学, 理学部, 教授 (20281503)
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Keywords | ビアリール / クロモフォア / フルオロフォア / 分子認識 / 認識部位 |
Research Abstract |
我々はこれまでに2,2’-ビナフタレンや2,2’-ビアントラセンに二つの認識部位を対称な位置に導入した種々のレセプターを用いて、特徴的なUV-visならびに蛍光スペクトル変化によって対象ゲストの認識情報を出力可能なレセプター群を合成してきた。しかしながら、これまで合成してきたレセプターはいずれもアリール骨格と認識部位がそれぞれ対称であった。そこで、本研究では二つの芳香環や導入する認識部位がそれぞれ異なるビアリール型のレセプターを構築することで、これまで以上に高次な分子認識が可能なレセプターを合成することを目的としている。 昨年度、クロスカップリング反応を利用して認識部位として一方に15-クラウン-5エーテルと尿素基を導入した2,2’-ビナフタレン誘導体の合成に成功した。このレセプターを用いて、α-アミノ酸、β-アラニンなどの認識について検討したが、協同的な認識は見いだせなかった。今後ジピリジルメチルアミノ基を導入することで亜鉛錯体を構築し、よりアミノ基に対して高い認識能を有するレセプターを構築する。一方でビアリールとして2-フェニルナフチル基を構築し、それぞれの芳香環上に15-クラウン-5エーテルやジピリジルメチルアミノ基を導入したレセプターを合成した。これらのレセプターは母体となった2,2’-ビナフタレン誘導体と比べて、二つの官能基の位置を調整したことによる会合能の向上が観測された。しかしながらそのスペクトル変化は単結合周りで対称なフェニル基に起因し少ないものであった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度合成を達成した種々の化合物に対して、全体の実施計画に従って、その認識能について詳細に検討した。認識部位の異なるレセプターについては協同的な認識が見いだせなかったが、蛍光スペクトルにおいて特徴的な違いが観測された。これまでにその機構についても十分に理解できており、次年度の分子設計に対する大きな指標を獲得できた。一方で非対称ビアリールについては、幾つかの化合物について評価を行い、高い会合能を獲得することができた。 これらの成果は本年度の研究計画に沿ったものであり、全体の研究計画から現在までの達成度概ね順調に進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は2,2’-ビナフタレンに導入する一方の認識部位についてジピリジルメチルアミノ基など他の官能基の導入を試み、二官能性レセプターの構築とその会合能について評価を行う。また、非対称ビアリールについては、会合能の向上は見られたものの、特に紫外-可視旧スペクトル変化は小さいものであったため、電子供与基や電子吸引基の導入によって、単結合周りの回転による基底状態ならびに励起状態の電子状態を認識前後で大きく変化させることによってより変化の多きい応答が可能なレセプターの基本骨格を構築する。いずれも紫外-可視吸収スペクトルや蛍光スペクトルだけでなく、円二色性スペクトルなど多岐にわたる分光学的方法によって詳細な情報を集め、研究の取りまとめを行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度は測定のための旅費を拠出しなかったため、繰越が生じた。また、物品費も測定が主となり、合成用試薬への必要額が少なかったために若干の繰越が生じた。 次年度にはこれまでの結果をもとに分子を再設計して合成するため、物品費の増加が見込まれる。また、円二色性スペクトルなどについて測定するために、旅費が必要となることが見込まれ、研究計画に沿った使用を行う予定である。
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