2013 Fiscal Year Research-status Report
イノシトールの環反転を利用したホウ酸捕捉デバイスの開発
Project/Area Number |
24550148
|
Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
湯浅 英哉 東京工業大学, 生命理工学研究科, 教授 (90261156)
|
Keywords | イノシトール / ホウ酸 / 中性子線治療 |
Research Abstract |
本研究は、2分子のホウ酸と共有結合を形成しながら環反転するシロイノシトールの性質を利用したホウ酸センサーの開発を当初の目標としていた。しかし、その合成途上、様々な問題が生じ、より合成の簡単な目的化合物の探索を行うこととなった。このような状況下、その目標を、中性子線治療を指向したイノシトールホウ酸複合体の合成研究へとシフトしてきた。ホウ酸は中性子線を吸収して、細胞毒性を持つアルファ線とリチウムに崩壊するが、拡散距離は短いため、癌細胞にホウ酸を封じることがでければ癌細胞選択的な殺傷が可能である。そこで、癌細胞選択的に取り込まれるプローブとして葉酸を結合させたシロイノシトール誘導体を合成し、これにホウ酸を結合させる合成計画をたてた。現在、葉酸を結合させる前段階まで合成が完了している。ミオイノシトールの3つのエカトリアル水酸基をギ酸オルトエステル化した後、選択的モノベンジル化をし、残る2つの水酸基を酸化しケトンとした。ケトンに対し、臭化アリルマグネシウムを用いたGrignard反応により、アルケン側鎖を付加させ、アルケンをオゾン酸化に続く還元でアルコールへと導いた。生じた1級水酸基をトシル化した後、アジド基に置換し、オルトエステルを除去することで、葉酸結合体前駆体を得ることができた。今後、アジドを還元し、葉酸とアミド結合させ、ホウ酸を加えることにより目的とする化合物を合成し、癌細胞への取り込みと中性子線治療効果を検証する。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初目的では平成25年度において、シロイノシトールにピレン基が結合した化合物が合成される予定であり、さらにこれをホウ酸捕捉樹脂の開発にまで展開する予定であった。しかしながら、予想に反しピレニル基は1つだけしか導入できず2つ目の導入が今のところ達成できていない。このような状況下、中性子線治療にホウ酸化合物を応用するという新しいアイディアが生まれ、合成目標もこちらをメインに展開するようになった。当初目標を鑑みると、やや遅れていると判断せざるを得ない。
|
Strategy for Future Research Activity |
上記のように、当初計画のホウ酸センサーの開発から、中性子線治療を指向したイノシトールホウ酸複合体の合成研究へと研究計画を変更した。この合成計画の母体となる骨格合成には成功しており、後は、癌選択的プローブを結合させるだけの段階まで進んでいる。今後は、癌選択的プローブの最初の試みとして葉酸を結合させ、ホウ酸化した後、癌細胞への取り込み実験、中性子線放射の影響について検証する。また、種々の癌選択的プローブを探索し、中性子線治療効果を細胞レベルで検証する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初、質量分析委託、NMR使用料、英語論文校正費を計55万円を予定していたが、これらは他の費目より賄い、その分の一部を物品購入に充て、全体的に12万円弱が残った。 研究目標が若干変化したことに伴い、目標化合物の合成経路に変更があり、それに伴う、合成試薬、物性測定に用いたい。
|