2012 Fiscal Year Research-status Report
水素結合型ベンゾセミキノン錯体に基づく磁性強誘電体の創製
Project/Area Number |
24550162
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
満身 稔 兵庫県立大学, 大学院物質理学研究科, 助教 (20295752)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 強誘電体 / 水素結合 / プロトンダイナミクス / 秩序ー無秩序相転移 |
Research Abstract |
本研究では,水素結合型p-ベンゾセミキノンロジウム錯体 [Cp*Rh(p-HSQ-Me4)]PF6 (1) (p-HSQ-Me4 = テトラメチル-p-ベンゾセミキノン)の構造相転移の詳細を,X線結晶構造解析,単結晶試料を用いた赤外反射率測定,固体高分解能13C NMRスペクトルにより調べた.また,このNMRスペクトルの測定に必要なサンプルを100mg程度合成できるように合成法の改良を行い,大量合成が可能となった.さらに,錯体1と同じ錯体カチオンを持つ[Cp*Rh(p-HSQ-Me4)]CF3SO3 (2) を合成し,結晶構造と誘電性を調べた.これらの錯体では,それぞれ237 K, 210 Kでプロトンの熱的なディスオーダーに起因する興味深い秩序-無秩序相転移が観測された.錯体1の赤外反射スペクトルでは,水素結合に関係するOH伸縮振動はベースラインにうねりがあり,うまく観測できなかったが,OH変角振動では,相転移にともない変化が見られた.また,13C NMRスペクトルでは,秩序-無秩序相転移にともない低温相の秩序相ではピークの分裂が観測された.本研究で見出したプロトンの熱的なディスオーダーはダイナミクスの視点からはたいへん興味深いが,室温付近での強誘電性発現には不利である.そこで,セミキノン配位子の酸性度を小さくすることで水素結合を弱めるために電子供与性置換基を導入した[Cp*Rh(p-HSQ-(OMe)4)]PF6 (3) を新規に合成し,結晶構造からプロトンの結合状態を調べた.その結果,プロトンは345 Kの高温でも熱的にディスオーダーしないことがわかった.極性結晶となれば,室温で強誘電性が発現されると期待される.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度目標とした,NMRスペクトル測定,比熱測定に必要なサンプルを100mg程度合成できるように合成法の改良を行い,大量合成を可能とした.この試料を用いた固体高分解能13C NMRスペクトル,また,単結晶試料を用いた赤外反射率測定を行い,プロトンの秩序-無秩序相転移を調べた.さらに,研究実績の概要で述べた[Cp*Rh(p-HSQ-(OMe)4)]PF6 (3) を新規に合成し,結晶構造からプロトンの結合状態を調べた.その結果,プロトンは345 Kの高温でも熱的にディスオーダーしないことがわかった.極性結晶となれば,室温で強誘電性が発現されると期待される.
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Strategy for Future Research Activity |
これまで合成した錯体1-3のプロトンが局在した秩序相では,結晶内に対称心のある構造であった.そこで,対称心を持たない結晶構造を構築するために,キラルな対陰イオンを導入し,極性結晶を作成し,強誘電性の発現を目指す.また,当初の計画通り25年度は,中心金属としてルテニウムやバナジウムを用いて水素結合型 p-ベンゾセミキノン錯体の合成・ 結晶化を行う.得られた物質の情報をフィードバックして,さらなる配位子と錯体の 分子設計と合成・結晶化を行なう.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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Research Products
(7 results)