2013 Fiscal Year Research-status Report
水素結合型ベンゾセミキノン錯体に基づく磁性強誘電体の創製
Project/Area Number |
24550162
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
満身 稔 兵庫県立大学, 物質理学研究科, 助教 (20295752)
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Keywords | 強誘電体 / 水素結合 / プロトンダイナミクス / 秩序ー無秩序転移 |
Research Abstract |
本研究では,水素結合内のプロトンの秩序―無秩序転移に伴い構造相転移を示すことを見出した水素結合型p-ベンゾセミキノン錯体 [Cp*Rh(HBSQ-Me4)]X (HBSQ-Me4=テトラメチル-p-ベンゾセミキノン,X = PF6 (1), CF3SO3 (2))について,その構造相転移の詳細をX線結晶構造解析,誘電率測定,比熱測定,固体高分解能13C NMRスペクトル測定,温度可変IR測定などによって調べている. 25年度は,昨年度,100 mgオーダーでの合成を可能にした合成法にしたがって,錯体1を300 mg程度合成し,比熱測定と固体高分解能13C NMRスペクトル測定を行った.比熱測定では,プロトンの秩序―無秩序転移による比熱のピークを観測できた.また,固体高分解能13C NMRスペクトルでは,誘電異常と一致して,低温側ではプロトンの片方の酸素原子側への局在化によるピーク分裂が観測され,プロトンの交換速度求めることができた.IRの温度依存性では,OH変角振動にプロトンの秩序―無秩序転移に伴う変化が観測された.さらに,中性子線回折に必要な1mm3 程度の体積の単結晶を得ることもできた.また,錯体2についても300 mg程度合成した.これについては,26年度に比熱測定,13C NMRスペクトル測定を行う. さらに,系内に混合原子価やスピンを導入するために,s-インダセンキノン(s-INDQ)の二つの5員環にそれぞれCp*Rhが配位したs-インダセンキノン錯体[Cp*Ru(s-INDQ)RuCp*]を分子設計し,合成を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度目標とした,錯体1の比熱測定と詳細な固体高分解能13C NMRスペクトル測定を行い,プロトンの秩序―無秩序転移を詳細に調べることができた.特に,低温側ではプロトンの片方の酸素原子側への局在化によるピーク分裂が観測され,得られたスペクトルについてシミュレーションを行い,プロトンの交換速度求めることができ,大きな収穫であった.一方,計画していたキラルな対アニオンを導入することによって極性結晶を得る試みは,現在までのところ,成功していない.また,混合原子価やスピンが期待されるs-インダセンキノン錯体 [Cp*RuII(s-INDQ)RuIICp*]を合成することができた.
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Strategy for Future Research Activity |
26年度は,錯体1の中性子線回折をJ-PARCを利用して行う.この結果とこれまでの合成,X線結晶構造,比熱,誘電性,固体高分解能13C NMRスペクトル,IRスペクトルの結果を合わせて論文を作成し,投稿する.錯体2について,比熱測定,13C NMRスペクトル測定を行う.錯体2に関しても,データが揃い次第,論文投稿する. さらに,s-インダセンキノン錯体 [Cp*Ru(II)(s-INDQ)Ru(II)Cp*]を用いて,水素結合型セミキノン錯体 [Ru(II)Cp*(Hs-INDSQ)Ru(II)Cp*]X (X = PF6, CF3SO3)の結晶化を行うとともに,化学酸化あるいは,電解酸化によって,混合原子価錯体[Ru(II)Cp*(H s-INDSQ)Ru(III)Cp*]の合成について検討する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
年度末に購入を希望した物品より,残額が少なかったため,この残額を次年度に繰り越すこととした. 残額を次年度分と合わせて,物品購入に充てる.
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Research Products
(6 results)
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[Journal Article] Bistable Multifunctionality and Switchable Strong Ferromagnetic-to-Antiferromagnetic Coupling in a One-dimensional Rhodium(I)-Semiquinonato Complex2014
Author(s)
Minoru Mitsumi, Takashi Nishitani, Shota Yamasaki, Nayuta Shimada, Yuuki Komatsu, Koshiro Toriumi, Yasutaka Kitagawa, Mitsutaka Okumura, Yuji Miyazaki, Natalia Gorska, Akira Ina-ba, Akinori Kanda, Noriaki Hanasaki
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Journal Title
J. Am. Chem. Soc.
Volume: 136
Pages: 印刷中
DOI
Peer Reviewed
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