2013 Fiscal Year Research-status Report
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24550163
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
大月 穣 日本大学, 理工学部, 教授 (80233188)
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Keywords | 超分子 / 光触媒 / 自己集合 / 水素発生 / コバルト錯体 |
Research Abstract |
本研究の目的は,「貴金属を用いない自己集合による超分子水素発生光触媒を創製すること」である.これは,光合成を模して,太陽光を用いて水を分解し,水素と酸素を生成させる分子系を構築する試みの一つである.最初の過程は,光を効率よく集めるかにある.天然では多くのクロロフィル分子が集合体をつくり,光吸収をする「アンテナ」としての役割を果たしている. この光を集光するアンテナ機能につながる成果として昨年度見いだした,人工クロロフィルの集合体に関して進展が見られた.ピリジル基をもつ亜鉛クロロフィルは二重らせん状に集合した結晶構造を与えた(J. Am. Chem. Soc. 2013, 135, 5262).ピリジル基の代わりにオキサゾールをもつ亜鉛クロロフィルは,階段状の集合体からなる結晶となることがわかった(Chem. Lett. 2014, in press).同じピリジル基をもつ別種の誘導体について,ピリジル基の向きの異なる2種類のクロロフィルは,一方はらせん状,他方は階段状に集合した結晶を与えた.一般に結晶構造を予想することは難しいが,この結果は,分子構造の設計によって,結晶内の分子集合構造が制御できる可能性を示している.さらに,デンドロン部位を有するピリジル基をもつ亜鉛クロロフィルが溶液中で超分子デンドリマーを形成することが示唆された. 一方で,当初計画にあった配位部位をもつナフタルイミド光増感剤の合成が完成した.吸収スペクトル,蛍光スペクトル,サイクリックボルタメトリを測定し,その特性を明らかにした.コバルトイオンを添加すると,この光増感剤の発光強度が減少した.コバルトと励起状態の光増感剤との間でなんらかの相互作用があることを示している.実際に光照射して水素発生実験を行ったが,現在のところ水素発生は見られていない.ひとつずつ反応条件を検討し,原因を追及する計画である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
「研究実績の概要」で述べたように,人工クロロフィル集合体構築では,当初の計画をこえて面白く展開している.一方で,配位部位をもつナフタルイミド光増感剤に関しては,予定項目の検討は進んでいるが,肝心の水素発生を確認できていない.そのために,遅れていると判断している.両者を合わせて,「やや遅れている」という自己判定である. 本研究で設定した目的は,「貴金属を用いない自己集合による超分子水素発生光触媒を創製すること」であった.この目的に沿った研究の中で,当初の具体的な計画には含まれていなかったクロロフィル集合体の構造を明らかにした.ピリジル基をもつ亜鉛クロロフィル誘導体が,結晶中で二重らせん状の集合構造をとるというものである.これは,人工の光捕集系構築のための新しい結果であり,最初の発見後,いくつかの誘導体がそれぞれの分子構造によって異なる集合構造をもつことを見いだし,されに分子構造と集合構造の関係について少し知見を得ることができた.当初の具体的な計画にあった自己集合による超分子水素発生光触媒に関しては,予定通りの化合物の合成は完成したが,最後の光照射による水素発生を確認できていない.今後,各プロセスを一つずつ検討してこの理由を解明し,当初の目的である貴金属を用いない自己集合による超分子水素発生光触媒を提示したい.
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Strategy for Future Research Activity |
人工クロロフィル集合体に関しては,さらに分子構造と集合構造の関連を明らかにしてある種の法則性を見いだしたい.もう一つは,溶液中でのクロロフィル集合構造に電子アクセプターを導入することによって,エネルギー移動で集光し,電子移動を行う複数の光合成初期プロセスを人工的に再現する系を構築する.そのための化合物の合成が進行中である. 自己集合による超分子水素発生光触媒に関しては,光照射によって水素が発生しなかった原因を,各プロセスひとつずつ検証する.提案した系は,ビピリジンというコバルトイオンに配位結合する部位をつないだ分子を光増感剤として用いるというものである.ビピリジンとコバルトイオンが錯体を形成すると,光増感剤と共存させたときに水素発生触媒になることは古くから知られている.光を吸収してから水素発生に至るプロセスは比較的単純に思えるが,実は多くの素過程からなる.光吸収,励起状態寿命,電子移動の有無,エネルギー移動の可能性,コバルトイオンとの錯体形成,溶液のpHや溶媒組成,犠牲還元剤の種類等,検討事項は多くあるので,系統的に検討し,科学的に新しい知見を得る.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
配位部位をもつナフタルイミド光増感剤の合成の予定からの遅れの影響で,合成が完了した後の実験用の支出がなかったために, 次年度使用額が生じた.種々反応条件を検討し,合成は完了したので,今後研究を継続する. 次年度使用額と当初予定額を合わせて,主にそれらの検討に必要な消耗品に当てる.例えば,さまざまな光特性の検討のためには,分光分析用の溶媒,測定用セルなどが必要である.これらの測定用の化合物の合成も再び行う必要があるために,合成用の試薬,器具の購入にもあてる.
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Research Products
(13 results)
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[Journal Article] Double Helices of a Pyridine-Appended Zinc Chlorophyll Derivative2013
Author(s)
Y. Shinozaki, G. Richards, K. Ogawa, A. Yamano, K. Ohara, K. Yamaguchi, S. Kawano, K. Tanaka, Y. Araki, T. Wada, J. Otsuki
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Journal Title
J. Am. Chem. Soc.
Volume: 135
Pages: 5262-5265
DOI
Peer Reviewed
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