2013 Fiscal Year Research-status Report
非古典的手法を用いた光学活性超分子有機発光体のキラルな光学特性制御
Project/Area Number |
24550165
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
今井 喜胤 近畿大学, 理工学部, 講師 (80388496)
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Keywords | 蛍光 / ビナフチル / 円偏光発光 / CPL / 円偏光二色性 / CD / 光学活性 / キラル |
Research Abstract |
本研究は、省資源・省エネルギー的手法を用いて、円偏光発光(CPL)特性を有する有機発光体の開発を目的としている。一般的に、光学活性材料のキラリティーに基づく光学特性を反転させるには、逆のキラリティーを有する光学活性物質を用いる。本研究では、同じ絶対配置を有する軸不斉ビナフチル化合物の非古典的CPL特性制御について検討した。 まず、軸不斉ビナフチル化合物 (R)-2,2'-Diethoxy-1,1'-binaphthyl [(R)-1]を用い、状態変化におけるCPLスペクトルの変化について検討を行った。固体KBr分散状態及び固体PMMAfilm分散状態で、CPLスペクトルの測定を行ったところ、興味深い事に、同じ軸不斉ビナフチル化合物を用いているにもかかわらず、CPLスペクトルの符号を反転させることに成功した。 次に、光学活性ビナフチルユニットが1つの軸不斉ビナフチル化合物(R)-(-)-(3,5-Dioxa-4-phosphacyclohepta[2,1-a:3,4-a']dinaphthalen-4-yl)dimethylamine [(R)-2]および光学活性ビナフチルユニットが2つの(11bR,11'bR)-4,4'-9,9-Dimethyl-9H-xanthene-4,5-diyl)bis-dinaphtho[2,1-d:1',2'-f][1,3,2]dioxaphosphepin [(R)-3]を用いた。(R)-2及び(R)- 3のchloroform溶液中でのCPLスペクトルを測定したところ、興味深い事に、同じ軸不斉ビナフチルユニットを有しているにもかかわらず、CPLスペクトルの符号が反転した。このように、同じ軸不斉ビナフチルユニットを用いているにもかかわらず、光学活性ビナフチルユニットの個数を変えることにより、CPLスペクトルの符号を制御する事に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
一般的に、左右の光学活性を有する光学活性な機能性材料を開発する場合、左右の光学活性な物質を出発化合物として用いる。しかしながら、左右両方の光学活性な物質は、一般的に高価であり、安易に入手することが困難な場合が多く、また、得るための光学分割が非常に困難な場合も生じる。そこで、同じ絶対配置を有する光学活性化合物を用い、他の要因を制御することにより、左右の光学特性を有する光学活性な機能性材料を開発することができれば、経済的・省資源・省エネルギー的観点からも、非常に優れている。当該年度の研究成果では、同じ絶対配置を有する軸不斉ビナフチル化合物を用いているにもかかわらず、その外部環境あるいは、隣接基効果の有無を制御することにより、円偏光発光(CPL)スペクトルの符号を反転させることに成功したため、評価を②とした。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の研究では、研究計画に沿って、同じキラリティーを有する光学活性な分子を用い、各種マトリックス分子と複合化させるにより、各種光学特性の符号を制御することを試みる。具体的には、キラリティーを反転させることなく、各種マトリックス分子として有機高分子材料あるいは無機物質を用いることにより、同じ構成分子で、分子配列様式を制御し、固体状態蛍光(PL)特性、固体状態円偏光二色(CD)性、円偏光発光(CPL)特性の制御を試みる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度は、研究がおおむね順調に推移したため、実験用試薬などの消耗品支出が大幅に少なく済んだ。また、研究に必要な測定機器である絶対PL量子収率測定装置の更新を予定していたが、積分球内部清掃・感度補正により、継続使用が可能になったため、設備備品費の支出が削減された。 今年度の予算計画として、実験用試薬などの消耗品を中心に使用する予定である。さらに、研究実施期間の最終年であるため、論文発表、学会発表など積極的に行う予定である。
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