2012 Fiscal Year Research-status Report
ゲストの捕捉および放出を制御できる刺激応答性シクロファン型ホスト多量体の開発
Project/Area Number |
24550166
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
林田 修 福岡大学, 理学部, 教授 (20231532)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ホストゲスト化学 / シクロファン / クラスター効果 |
Research Abstract |
ゲストに対する捕捉力が飛躍的に向上するクラスター効果の概念をホストの分子設計に取り入れて、複数個のシクロファンを集積した新規ホストを開発し、細胞への薬物送達のための効果的なキャリアーとしての可能性を探索した。クリック反応を採用することにより、複数個のシクロファンを集積した新規ホストを高収率で合成することに成功した。さらに、ペプチド合成法を利用してシクロファン2量体から5量体までのホストも合成した。これら多量体ホストのゲストに対する捕捉能は単環性ホストと比較して飛躍的に向上した。また、ジスルフィド結合で連結したシクロファン2量体を合成し、外部刺激によって単量体へ解裂し、包接ゲストを放出できることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ゲストに対する捕捉力が飛躍的に向上するクラスター効果の概念をホストの分子設計に取り入れて、複数個のシクロファンを集積した新規ホストを開発した。具体的には、クリック反応により、複数個のシクロファンを集積した新規ホストを高収率で合成することに成功した。さらに、ペプチド合成法を利用してシクロファン2量体から5量体までのホストの合成にも成功した。一方、動的共有結合として知られるある種の結合では、酸化還元や熱などの外部刺激によってその結合の解離・付加を可逆的に制御することができる。そこで、外部刺激に応じてシクロファン多量体をシクロファン単量体へ解裂させることをねらって、動的共有結合を取り入れたシクロファン多量体を開発することにした。具体的には、動的共有結合であるジスルフィド結合で2つのシクロファン誘導体を連結したシクロファン2量体(S2)を分子設計し、合成した。まず、S2 のゲスト捕捉におけるクラスター効果を蛍光プローブ法から評価したところ、S2 のTNS に対する K (73,000 (1/M))は S1 が示す値と比較して8倍の向上があり、クラスター効果を発現することが確かめられた。次に、S2 とTNSからなるホスト-ゲスト複合体を含む HEPES 緩衝液に還元剤であるジチオトレイトール(DTT)を添加したところ、包接されたTNS に由来する蛍光強度が徐々に減少していき、最終的にはおよそ90%のゲストがバルク水中に放出された。この結果から、還元剤による刺激によってシクロファン2量体がシクロファン単量体へ解裂し、クラスター効果の解消を伴った包接ゲストの放出が実現できたものと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
効果的な薬物送達システムを開発するためには、刺激応答型の薬物放出システムが有効である。本研究は、「クラスター効果」に基づいてゲスト(薬物)を強く捕捉し、さらに「動的共有結合」の考えに基づきクラスター効果を解消してゲストを放出制御できる刺激応答性分子システムを確立する。すなわち、ホストとしてジスルフィド結合などの動的共有結合でシクロファンを互いに連結したシクロファン多量体を開発し、細胞内などの還元的雰囲気においてシクロファン多量体がシクロファン単量体に解離することで、クラスター効果の解消とともにゲスト捕捉力が劇的に低下してゲストを放出する分子システムを構築する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
物品費として1,000,000円、旅費として300,000円、人件費・謝金に100,000円、その他に100,000円を予定している。50万円を超える物品の購入予定はない。
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