2014 Fiscal Year Annual Research Report
鉄を含む化合物半導体における高い熱電特性の機構解明
Project/Area Number |
24550168
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
辻井 直人 独立行政法人物質・材料研究機構, その他部局等, その他 (90354365)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 熱電材料 / 磁性半導体 / 鉱物 / 出力因子 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、天然の磁性半導体であるカルコパイライトにキャリアドープを行った試料を作成し、熱電特性評価と物性測定を行うことにより、高い熱電特性の機構を明らかにするとともに、実用的な見地からさらに特性向上を目指すことを目的としている。H26年度ではより系統的な試料作成と高温の熱電特性評価を行った。Fe濃度を変化させた試料Cu(1-x)Fe(1+x)S2では、x=0.03~0.05において、室温から600 Kの広い温度範囲で、0.8~1.0 mW/K2m程度の高いパワーファクターが観測された。熱伝導率も室温以上で単調に減少し、600 Kでは2W/Km程度まで低下した。この結果、無次元性能指数は、600 KでZT = 0.23となった。さらなる熱伝導率低減のため、2つのアプローチを行った。一つは焼結体に歪みを加える方法(Severe Plastic Deformation = SPD)、もう一つはより大きなユニットセルを持つ類似化合物の作成である。SPDでは室温の熱伝導率が1/3程度に低減した。ただし電気伝導率も低下しており、条件の最適化が必要である。類似化合物では、Talnakhite(Cu9Fe9S16)の作成と物性測定を行った。この物質においても1/3程度の低い熱伝導率が達成された。また電気伝導性もカルコパイライトと同程度であった。しかしキャリア数が多すぎるため、ゼーベック係数が低減してしまっており、ZTはカルコパイライトと同程度であった。そこでキャリア数の最適化が必要である。また、キャリアドープを行ったカルコパイライトの輸送特性を詳しく比較した結果、Feリッチにした試料よりもZnドープを行った試料でより高い特性が得られており、Feサイトの伝導電子が高い移動度を保つことが重要であるとの示唆を得た。このように特性向上と機構解明の両方において重要な結果が得られた。
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